朝日新聞社の文章校正AIが自治体業務を変革 龍ケ崎市でTypoless本格導入

2025年12月23日、朝日新聞社は文章校正AI「Typoless」が茨城県龍ケ崎市に導入されたと発表した。新聞社の校正ノウハウとAI技術を組み合わせた同サービスが、自治体広報業務の文書作成や校正工程で活用される事例が示された。
Typoless、龍ケ崎市の広報業務で運用開始
朝日新聞社が開発したTypolessは、新聞制作で培われた校正ノウハウと独自の自然言語処理技術を組み合わせた校正支援サービスで、2023年10月に提供が開始された。
龍ケ崎市では、秘書広聴課が月1回発行する広報紙「りゅうほー」をはじめ、プレスリリースや市長記者会見の原稿作成に導入され、文章チェック業務の効率化を図っている。
導入により、従来必要だった校正回数や作業人数、作業時間が大幅に減少し、職員の精神的負荷も軽減されたという。
また、新聞社基準に基づく校正精度の向上、PDFファイルの直接校正やカスタム辞書で自治体独自ルールの反映、引き継ぎ時のノウハウ継承が容易になる点も評価されている。
TypolessはWord、Excel、PowerPoint、Google Docsに対応するほか、テキストはサーバーに保存されずAI学習にも利用されないため、安全性の高い校正環境を提供する。
加えて、良文サポートや炎上リスクチェック機能により、文章の正確性と表現の適切さを補助することができる。
また、朝日新聞社は今後、Typolessの自治体向け展開をさらに拡大する方針を示している。3カ月間無料で利用できる実証実験パートナー制度を設け、官公庁や自治体での活用事例を増やしながら、校正支援AIの機能強化を進める計画だ。
自治体業務にAI校正を導入する意義と今後の課題
文章校正AIの導入は、人手不足が続く自治体業務の効率化に寄与する可能性がある。
広報や文書作成は確認工程が多く属人化しやすいため、AIの補助により作業の標準化や精度向上が期待できる。複数担当者での分担作業やチェック漏れのリスクを低減できる点も大きなメリットとなるだろう。
一方で、文脈理解や市民感情への配慮、地域特有の表現判断は人間に委ねられる領域であるため、最終確認体制を維持することが不可欠である。AIだけに依存すると、微妙なニュアンスや誤解を招く表現を見落とす可能性が残る。
導入コストや職員への定着支援も課題となり得る。
操作習熟や既存業務フローとの調整が不十分だと、期待される効率化効果が十分に発揮されない可能性がある。
特に、自治体規模や担当者スキルに応じた運用設計が求められそうだ。
それでも、新聞社基準の校正ノウハウをAIとして共有できる点は、自治体広報の質を底上げする契機になり得る。導入事例が増え、他自治体への展開が進めば、行政文書全体の信頼性向上や市民への情報伝達の精度向上にもつながるかもしれない。
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