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    高校必修数学が変わる 数学IにAI素養を組み込み文理の壁を越える

    2025年12月22日、文部科学省が高校数学の必修科目「数学I」に、AIやデータサイエンスの基礎理論を学ぶ新単元を設ける方針を示したと報じられた。
    中央教育審議会作業部会に文科省案として提示され、日本の高校教育における数学の位置づけが大きく変わる可能性がある。

    目次

    数学IにAI基礎を必修化 文系も行列・ベクトルを学ぶ

    文部科学省は、高校数学の必修科目である数学Iに、AIの仕組みを理解するための基礎理論を学ぶ単元を新設する検討に入った。

    対象となるのは、行列やベクトルといった数理概念で、これまで主に理系志望の生徒が選択科目で学んできた内容だ。
    必修化により、文系志望の生徒もAI技術の土台に触れる機会が広がる見込みだ。

    新設が検討されている単元は二つある。
    一つは「社会を読み解く数学(仮称)」で、AIやデータ分析の基礎となる数理的要点を抽出して教える構成となる。もう一つの「数学ガイダンス(仮称)」では、高校数学が産業や社会でどのように活用されているかを示し、学習意欲の向上を狙う。

    この案は、次期学習指導要領を議論する中央教育審議会作業部会に文科省案として提示される予定である。中教審は2026年度中に文部科学相へ答申し、2032年度からの適用を見込む。

    なお現在は、高校数学はI・II・IIIとA・B・Cの六科目に分かれており、必修は数学Iのみである。

    AI時代の基礎教養へ 理解促進と負荷増大の両面

    数学IへのAI素養の組み込みは、AIを単に使う存在から、その原理を理解する人材を育てるという点で大きなメリットがあると考えられる。
    文系・理系を問わず共通の基礎を持つことで、AIの出力を無批判に受け入れるブラックボックス化(※)を防ぐ効果がありそうだ。
    また、AI活用が前提となるビジネス環境では、最低限の数理的理解が競争力につながる可能性もある。

    一方で、必修科目への内容追加は学習負荷の増大を招く懸念がある。
    理解が追いつかない生徒が増えれば、数学への苦手意識が強まるリスクも否定できない。大学入学共通テストなど入試制度にどう反映させるかも、今後の調整が不可欠となりそうだ。

    文科省は選択科目の再編も視野に入れ、生徒が進路や関心に応じて単元を柔軟に選べる仕組みを構想しているという。
    必修数学の再定義は、日本の教育がAI時代の基礎教養をどう位置づけるかを問う試みであり、その成否は実施段階の設計にかかっていると言える。

    ※ブラックボックス化:AIの内部構造や判断過程が理解されないまま、結果のみが利用される状態を指す。

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