nonatと岐阜大学病院が共同研究 女性・子供向け医療AIは何が変わるのか

2025年12月22日、医療AIスタートアップのnonatは、岐阜大学医学部附属病院との共同研究開始を発表した。日本国内の医療機関と連携し、女性・子供に特化したAI基盤モデルの研究開発を本格化させる。
女性・子供特化AI基盤を共同開発、妊娠期から実装へ
nonatは、岐阜大学医学部附属病院、医療法人セントポーリア 操レディスホスピタルと連携し、女性・子供に特化したAI基盤モデルの共同研究を開始した。第一段階では妊娠期に焦点を当て、AIを活用した妊娠モニタリング技術の確立と、将来的な医療サービス提供を目指す。
本研究は多施設共同研究として実施され、複数医療機関の臨床データや知見を統合する点が特徴となる。妊婦の年齢、生活背景、地域差といった多様な母集団特性を取り込むことで、モデルの精度と汎用性を高める狙いがある。単一施設では偏りが生じやすい医療AI開発に対し、実臨床に即した検証環境を構築する試みと言える。
背景には、産婦人科・小児科領域における医療資源の偏在と業務負荷の増大がある。診療の高度化が進む一方、地方では人手不足や支援体制の限界が顕在化している。女性・子供に特化したAI基盤モデル(※)を中核に、医師の意思決定支援とケアの質向上を同時に実現することが、本共同研究の到達点となる。
※基盤モデル:特定用途に限定せず、多様な医療データを学習したAIの基礎モデル。追加学習により複数の医療タスクへ応用できる点が特徴。
医療DXの加速装置となるか 期待と課題、次の一手
本取り組みのメリットとして注目されるのは、女性・子供という個体差やライフステージの幅が大きい領域に対し、専用のAI基盤モデルを構築しようとしている点だ。
妊娠期のデータを継続的に活用できれば、リスク兆候の早期把握や医療従事者の業務負担軽減につながる可能性がある。
地域差の大きい医療圏においても、ケア水準の底上げを支援する技術基盤となることが期待される。
一方で、臨床データを用いたAI研究には慎重な検討も欠かせない。
データ品質のばらつきやプライバシー保護、アルゴリズムの説明可能性といった課題は、社会実装を進める過程で必ず論点となる。
特に妊娠期や小児医療は扱う情報の性質上、倫理設計やガバナンスをどの段階で、どこまで整備できるかが重要な論点になる。
それでも、臨床現場と研究開発を往復する実装型研究は、日本の医療AIが実用フェーズへ進む上で有力なアプローチの一つと言える。
岐阜という地方発のモデルが標準化されれば、全国展開、さらには海外展開へ発展する余地もある。女性・子供特化AIが医療DXの中核技術へ成長するかどうかは、今後の検証結果と運用設計に委ねられている。
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