飛騨市とさくらインターネット、生成AI実証実験を行政業務で開始

岐阜県飛騨市は、さくらインターネットと連携し、行政業務における生成AI活用の有効性を検証する実証実験を開始した。
国内データセンターで運用される「さくらのAIソリューション」を活用し、議事録作成や文書検索などの業務効率化を図る取り組みだ。
飛騨市とさくらインターネット、行政AI活用の実証を開始
2025年12月22日、岐阜県飛騨市とさくらインターネット株式会社は、同日から2026年3月31日までの期間、行政業務におけるAI活用の有効性を検証する実証実験を開始したと発表した。
さくらインターネットは、生成AI業務支援サービス「さくらのAIソリューション」を飛騨市に無償提供する。
実証では、議事録作成アプリケーションや、RAG(※)機能を備えたチャットアプリケーション「InfiniCloud® AI パッケージ」などを活用する。
会議記録の作成支援や、庁内文書・規程を対象とした検索対応を想定し、日常的な行政業務での利用を通じて効果を検証する予定だ。
同サービスは、日本国内のデータセンターで運用される専有GPU環境を基盤とし、データを国外に出さずに利用できる点が特徴とされる。
高いセキュリティ性や、月額固定によるコスト設計、導入・運用を支援する体制が評価され、今回の実証実験での採用に至った。
飛騨市ではこれまで、書かない窓口システムの導入やデジタル人材育成研修など、行政DXを段階的に進めてきた。
2025年6月に同市で開催された「自治体向けクラウド勉強会」を契機に、両者の連携が具体化し、本実証実験の開始につながった。
※RAG:Retrieval Augmented Generation。外部文書やデータベースを検索し、その内容を参照しながら生成AIが回答を行う仕組み。
国産生成AIは自治体DXを加速するか 期待と課題
今回の実証実験は、国産かつ国内完結型の生成AIを実際の行政業務に適用する点で、自治体DXの実装段階を示す事例と言える。
議事録作成や文書検索といった定型業務で一定の成果が確認されれば、職員の作業負担軽減や業務の標準化につながる可能性がある。
一方で、生成AIの出力は最終判断を代替するものではなく、確認や修正を前提とした運用が不可欠となるだろう。
誤情報の混入や、参照文書の管理方法によっては、業務リスクが顕在化する懸念も否定できない。
どこまでをAIに任せ、どこを人が担うかという線引きが重要になると考えられる。
また、特定のサービスに依存した運用設計となった場合、将来的な切り替えや拡張に制約が生じる可能性もある。
実証を通じて得られる知見を、運用ルールや人材育成の仕組みとして整理できるかが、他自治体への波及を左右する要素となりそうだ。
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