三菱UFJ銀行、Private AI採用で非構造化データ秘匿化 行内AI活用を拡大へ

2025年12月18日、三菱UFJ銀行は、行内ビッグデータ基盤「OCEAN」において、カナダ発のPrivate AIのデータ秘匿化ソリューションを正式採用したと発表した。日本の金融機関における生成AI活用を、非構造化データ領域まで本格的に広げる動きとして注目される。
三菱UFJ銀、Private AIで非構造化データを安全活用
三菱UFJ銀行は、MUFGのデータ利活用を支える基盤「OCEAN」に、Private AIのデータ秘匿化ソリューションを導入した。対象となるのは、メール、コールセンター通話記録、社内文書、PDF、チャットログなど、個人情報を含みやすく従来は活用が難しかった非構造化データである。
本ソリューションにより、氏名や住所、電話番号、口座番号などの個人情報(PII)(※)や機密情報を高精度に自動検出し、秘匿化した状態でOCEANへ連携することが可能となった。これにより、全社横断の分析業務に加え、非構造化データそのものを生成AIや業務AIに活用できる環境が整う。
Private AIの特長は、クラウドにデータを送信せず、オンプレミスや閉域環境内でリアルタイムに処理できる点にある。金融機関に求められる厳格なデータガバナンスを維持しながら、AI活用を前進させられることが採用の決め手となった。事前の技術検証では、実業務を想定した多様な非構造化ファイルにおいて、実運用に耐え得る匿名化性能が確認されている。
※PII:Personal Identifiable Informationの略。氏名や住所、口座番号など、特定の個人を識別できる情報を指す。金融分野では特に厳格な管理が求められる。
金融AI活用の分水嶺 生産性向上と統制の両立は進むか
今回の取り組みのメリットの一つは、これまで活用が進みにくかった非構造化データを、安全性を担保した形で価値に転換できる点にある。顧客対応の高度化や不正検知、リスク管理、社内ナレッジ共有など、データ量と質が成果を左右する領域において、AI活用の幅が広がる可能性がある。
一方で、秘匿化技術への依存が高まることは、新たなリスクを伴う側面も否定できない。検出精度が不十分な場合には情報漏えいにつながり、過度なマスキングは分析価値を低下させる恐れがある。実運用においては、精度を維持するための継続的な検証や改善が重要となる。
それでも、ガバナンスを前提に生成AI活用を進める姿勢は、国内金融業界全体に一定の影響を与えると考えられる。今後は、データを「使えるか」だけでなく、「どう安全に使い続けるか」が競争力に影響する要素の一つとなるだろう。三菱UFJ銀行の事例は、その方向性を示す先行的な取り組みとして位置づけられる。
関連記事:
三菱UFJ、OpenAIと提携 全行員へのAI活用本格化へ

三菱UFJとNRI、生成AIで人材配置精度を向上 金融業界の人事DXを加速












