京都大学とテラバース、キリスト教AIを開発開始 教理問答を対話AIで探究

2025年12月17日、京都大学と株式会社テラバースは、キリスト教の教義を対話形式で学べるAI「プロテスタント教理問答ボット」の開発開始を発表した。日本国内の研究プロジェクトで、仏教AIに続く宗教AIの新展開として注目を集めている。
京都大学×テラバース、プロテスタント教理問答ボットを開発
本研究は、京都大学 人と社会の未来研究院の熊谷誠慈教授と、テラバース社CEOの古屋俊和氏らによる共同プロジェクトである。開発リーダーは波勢邦生博士が務め、将来的なキリスト教AI創成の出発点として位置づけられている。
今回開発されたのは、キリスト教の教えをQ&A形式で学べる「プロテスタント教理問答ボット(通称:カテキズムボット)」だ。「カテキズム」(※)は、洗礼や堅信礼などの通過儀礼前に用いられてきた教理教育の枠組みであり、長い歴史の中で口頭と文書の双方で継承されてきた。
研究グループは、これまでブッダボットなど複数の仏教AIを開発してきた実績を持つ。今回の取り組みは、その知見を生かしつつ対象をキリスト教へと拡張するものとなる。
キリスト教に馴染みの薄い日本社会においても、世界最大の宗教に関する体系的知識を、対話を通じて理解できる環境を提供する狙いがある。
熊谷教授は「既存の仏教AIに加え、キリスト教AIを開発したことで、AI開発における宗教多様性を実現できた」とコメントしており、今後も哲人や聖者の思想を再現する対話AIを順次開発していく方針を示している。
※カテキズム:キリスト教の基本教義を問答形式でまとめた教理書の総称。入信教育や洗礼準備などで用いられ、信仰理解の基盤として歴史的に重要な役割を果たしてきた。
宗教AIの意義と課題 伝統知テックはどこへ向かうか
今回のキリスト教AI開発は、宗教知を専門家や信徒に限定されたものから、より幅広い層が触れられる知的資源へと拡張する可能性を持つ取り組みと考えられる。
AIを介することで、宗教的背景の異なる人々が教義に接し、比較や理解を深めるきっかけが生まれる点は、一つの利点と言えるだろう。
一方で、教義解釈の正確性や中立性をどのように担保するかは、今後の運用次第で評価が分かれる論点である。宗派ごとの差異や歴史的文脈をどこまで反映できるかによって、AIが提示する情報の信頼性は左右される可能性がある。
信仰と学術情報の境界をどう設計するかも、継続的な検討が求められる。
それでも、宗教や哲学をAIで扱う試みは、人文知と先端技術を接続する新たな領域を模索する動きとして注目されている。
仏教AIに続く今回の事例は、日本発の「伝統知テック」が教育や研究、文化理解の分野へ展開していく可能性を示すものと言える。
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