VisaとAkamaiがAIエージェント決済の不正対策で連携 身元と代理先を同時検証

米VisaとAkamai Technologiesは、AIエージェントがユーザーの代理でオンライン決済を行う取引の安全性を高めるため、身元と代理先を検証する枠組みの共同構築で提携すると発表した。
AIボットの急増を背景に、エージェント型コマースの不正対策強化が進む見込みだ。
VisaとAkamaiがAI取引の正当性検証で提携
2025年12月17日、VisaとAkamai Technologiesは、AIエージェントがオンラインで購買から決済までを代行する「エージェント型コマース(※)」の安全性向上を目的に、両社の技術を連携させる取り組みを発表した。
提携の中心となるのは、Visaが提供する「Visa Trusted Agent Protocol」と、Akamaiのエッジ基盤による行動インテリジェンスおよびユーザー認識技術である。
これにより、加盟店は取引を行うエージェントが正規の利用者によって認証されたものであるかどうかを判別しやすくなる。
Akamaiは2025年のレポートで、AIを搭載したボットによるトラフィックが過去1年間で300%増加したと報告しており、加盟店が人間の意思に基づく取引か否かを識別する必要性が高まっている。
Visaのプロトコルは、ユーザー情報をトークン化したデジタル認証情報としてエージェントに引き継ぎ、加盟店側のインフラ変更を最小限に抑えた導入を可能にする設計で、世界1億7500万の加盟店で活用できるとされる。
また、Visaは今年「Intelligent Commerce」を立ち上げ、エージェント型AIによるショッピング体験の開発支援を開始していた。
9月にはGoogleが「Agent Payments Protocol(AP2)」を発表するなど、各社がAIエージェントを前提とした決済基盤の整備を進めている。
※エージェント型コマース:AIがユーザーの指示や条件に基づき、商品検索から決済までを自動で代行するオンライン取引の形態。加盟店は、エージェントの身元と代理先を同時に確認する必要がある。
AIエージェント普及へ 利便性とリスク管理の両立が焦点
AIエージェントによる購買代行は、比較・検索・決済を自動化することで利用者の利便性を大きく高める可能性がある。
VisaとAkamaiの連携により、加盟店はエージェントの行動履歴と認証情報を組み合わせて確認でき、不正な自動化による取引を排除しやすくなる点はメリットといえる。
一方で、ユーザーが設定した代理権限の範囲や、誤判定が発生した場合の対応は、今後の運用で課題となる余地がありそうだ。
また、AP2など他社の仕組みとの整合性が取れなければ、加盟店側の実装負荷が増える可能性があるため、AIエージェント間の相互運用性や、複数のプロトコルが並行して普及することによる標準化の遅れも留意点となるはずだ。
一方で、信頼レイヤーが整備されれば、企業はAIエージェントを前提とした新たな顧客体験を設計しやすくなり、決済プロセス全体の効率化につながることも期待できる。
総じて、今回の提携はAIエージェント普及に伴う課題の一部を解消する方向に働くが、利便性拡大とリスク管理の均衡をどこに置くかが今後の焦点になると言える。
Akamai Technologies, Inc. プレスリリース
関連記事:
Visaが発表、AIエージェントによる自動取引を視野に入れた決済基盤












