トリコがミントタウンと資本業務提携 約8億円規模でETH戦略運用へ

2025年12月17日、東証グロース上場のトリコ(TORICO)は、Web3事業を手掛けるミントタウンとの資本業務提携を発表した。暗号資産投資事業を本格化させ、日本国内でのETH運用戦略を強化する方針である。
トリコ、暗号資産投資事業でETHへ本格転換
トリコは12月17日、Web3ゲームやプラットフォーム事業を展開するミントタウンと資本業務提携契約を締結したと公表した。全巻セット専門ネット書店「漫画全巻ドットコム」など既存事業とのシナジーや、中長期的な企業価値向上を見据えた判断だという。
同社はこれまでビットコインへの投資方針を示していたが、今回あらためて投資対象をイーサリアムへ変更した。取得したETHは単なる保有にとどめず、ステーキング(※)などの運用手法を組み合わせ、事業用資産として収益化を図る考えである。
資金調達は第三者割当増資と新株予約権発行により実施され、新株式で3億2,300万円、新株予約権で1億4,500万円を確保する。既存の調達資金や手元資金を含め、最大8億2,100万円をETH購入に充当する計画である。
あわせて、暗号資産投資事業を担う100%出資子会社「株式会社TORICO Ethereum」を2026年1月に設立する方針も明らかにした。代表取締役には、Web3スタートアップのプレイシンク代表取締役社長である尾下順治氏が就任予定とされている。
ミントタウンはDAT戦略や新規事業、IR戦略の支援を担う。同社代表取締役の國光宏尚氏は、2026年6月開催予定の定時株主総会でトリコ取締役に指名される予定で、それまでDAT事業アドバイザーとして関与する。
※ステーキング:保有する暗号資産をネットワークに預け、取引承認などに貢献することで報酬を得る仕組み。
企業財務に暗号資産を組み込む意義と慎重論
今回の取り組みは、暗号資産を投機対象ではなく企業財務の一部として位置付ける点に特徴がある。法定通貨中心の資金管理に比べ、インフレ耐性や資産分散の観点で柔軟性が高まる可能性があり、中長期視点では財務戦略の選択肢を広げる効果が見込まれる。
一方で、暗号資産を組み入れる以上、価格変動リスクを完全に排除することは難しい。
短期間での評価損益が業績や株価に影響を与える可能性もあり、安定性を重視する投資家との認識ギャップが生じる懸念も残る。
また、運用スキームや管理体制が不透明な場合、ガバナンス面での疑念を招きかねない。特に上場企業においては、意思決定プロセスやリスク管理方針を明確に示し続ける姿勢が、市場からの評価を左右する要素となるだろう。
それでも、国内企業が暗号資産を戦略的に扱う事例が増えれば、市場全体の成熟を後押しする契機になり得る。今回の動きは、単なる話題性にとどまらず、日本企業の財務戦略が変化する兆しとして注視される展開と言える。
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