SBエンジニアリング、BIM×IoT×AIで設備管理を刷新　製造業の保全判断が変わる

2025年12月18日、SBエンジニアリングは国内製造業向けに、BIM・IoT・AIを組み合わせた設備管理システム「Visual Flow」の提供を開始した。
設備の現実の設備やプロセスを仮想空間に再現するデジタルツインを構築し、保全判断の迅速化を支援する狙いだ。

BIM×IoT×AIで設備の状態を3D上に集約

SBエンジニアリングが発表した「Visual Flow」は、BIM（※）を基盤にIoTセンサーや点検記録を統合し、設備の状態を3Dモデル上で可視化する設備管理プラットフォームである。
化学工業や窯業、ゴム・プラスチック業など、配管や静機器を多く抱えるプロセス型製造業を主な対象とする。

背景には、日本の製造現場における構造的な問題がある。
設備の高経年化と人手不足といった問題に加え、部署ごとにデータが分断されている構造があり、紙台帳やExcel管理に依存する現場では、不具合箇所の特定に時間がかかる状況が続いてきた。

こうした課題に対し、「Visual Flow」は、IoTから取得したリアルタイムデータをBIM上に反映し、異常の兆候の即時把握を可能にすることで応える。
現場担当者から管理層までが同一の3Dダッシュボードを共有することで、部門横断での意思決定を可能にする仕組みだ。

※BIM：建物や設備を3Dモデルで表現し、設計・施工・維持管理の情報を一元管理する手法。近年は工場設備やインフラ管理にも応用が進んでいる。

予知保全への進化が示す期待と導入の壁

同社は今後、「Visual Flow」にAI分析機能を段階的に追加し、蓄積データを活用した予知保全やナレッジ継承の実現を目指すとしている。
熟練技術者の暗黙知をデータとして残せれば、人材不足が深刻な現場にとって大きな価値を持つだろう。
設備稼働率の最大化は、コスト削減だけでなく安定供給の面でも意義がありそうだ。

一方で、導入初期のハードルも無視できない。既存設備のBIM化やセンサー設置には一定の投資が必要となり、短期的な費用対効果が見えにくいケースも想定される。
また、データ活用を前提とした業務プロセスへの転換には、現場の理解と運用設計が欠かせないだろう。

それでも、設備管理の高度化が競争力に直結する時代において、デジタルツインを軸とした統合管理は有力な選択肢となりつつある。
製造業のDXが進む中で、「Visual Flow」がどこまで現場定着を果たせるかが今後の焦点になるだろう。

プレスリリース

関連記事:

日立がAIで現場安全支援を高度化　NVIDIAのOmniverse活用しデジタルツイン展開へ

あわせて読みたい

日立がAIで現場安全支援を高度化　NVIDIAのOmniverse活用しデジタルツイン展開へ 2025年7月8日、日立製作所は、NVIDIAの仮想空間技術「Omniverse」を活用し、熟練作業者の知見を学習したAIエージェントによって作業現場の安全性を高める「現場安全高度...