AIに関する音楽団体協議会が意見表明 クリエイター権利保護へ制度対応訴え

2025年12月17日、国内の9団体が参加する「AIに関する音楽団体協議会」が、クリエイターやアーティストの権利保護と生成AIの適切利用に関する意見を公表した。AI技術の急速な進展に伴い、権利侵害リスクへの対応が急務となっている。
AI利用拡大で音楽権利侵害防止の指針表明
AI技術の発展により、Suno AIやSora2などの生成サービスが広く利用される一方で、権利侵害コンテンツが流通する事態が深刻化している。この状況を受け、音楽団体協議会はクリエイターやアーティストの権利保護とAIの適切利用に関する見解を示した。
協議会は、生成AIの学習データの記録・保存・開示を義務付ける法的措置の必要性を強調しており、透明性確保が創作活動との調和に不可欠であると指摘する。
また、権利侵害コンテンツの削除負担をクリエイター側に課すことを容認せず、AI開発事業者にも一定の法的責任を求める方針だ。
さらに、作風の類似したAI生成物が大量に出回ることで、クリエイターの活動の場が狭まる懸念も示された。
現行の著作権法第30条の4では、営利目的の学習利用に権利者が反対の意思を反映できないため、意思表示の選択機会を設ける必要があるとしている。
アーティストの肖像や声、演奏スタイルを再現するディープフェイクへの対策、海賊版データの学習利用禁止と罰則付与についても必要性を訴えた。
協議会は「for Creators, for Artists」の理念を掲げ、音楽文化・コンテンツ産業の発展を阻害せず、AIを創作活動に有益に活用できる環境整備を目指すとしている。
AI活用の分岐点 創作支援か文化の空洞化か
今回の声明は、音楽業界がAIを全面否定しているわけではない点に特徴がある。
適切なルールが整えば、AIは制作補助や新たな表現手段として、クリエイターの創作効率を高める可能性を持つ。安心して使える環境整備が進めば、技術革新の恩恵は大きいと言える。
一方で、制度対応が遅れた場合のリスクは深刻だ。
作風や声質を模倣したAI生成物が氾濫すれば、オリジナルの価値が埋没し、職業としての創作活動が成立しにくくなる恐れがある。こうした事態は個人の問題にとどまらず、文化全体の基盤を揺るがしかねない。
事業者側に責任を求める姿勢は、AI開発のコスト増を招く可能性もある。ただし、透明性確保やデータ管理は長期的には市場の信頼性を高め、持続的なAIビジネスの前提条件になると考えられる。
今後、行政がどこまで制度改正に踏み込むかが焦点となるだろう。音楽業界の集団的な問題提起は、他のコンテンツ分野にも波及する可能性があり、日本のAI政策の行方を占う象徴的な事例となりそうだ。
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