データグリッドの図面解析AI、検図工数を62%削減 矢作建設工業が生成AI活用を本格化

矢作建設工業株式会社は、データグリッドが提供する図面解析AIソリューションを用いた検図業務の効率化検証を開始したと発表した。
同検証は施工図と構造図の整合性を生成AIで照合するもので、建設現場の定型業務削減に向けた取り組みである。
矢作建設工業、AI活用で検図業務を62%削減と確認
2025年12月17日、矢作建設工業は、データグリッドの支援のもと、生成AIを活用した検図業務の効率化と平準化に向けた検証を開始したと発表した。
今回の取り組みでは、同社が施工した物流施設の図面33ページ・全18種にわたる240サンプルを対象に、図面解析AIソリューションを活用した整合性チェックを実施した。
その結果、AIが高い確信度で整合・不整合を判定した領域が全体の62%に達し、この範囲では施工管理職員による確認作業が不要となることが示された。
矢作建設工業は現中期経営計画(2021〜2025年度)を、生産性向上のための基盤構築期間と位置づけており、生成AIを含むデジタル技術の導入を進めてきた。
建設現場では、協力会社が作成した施工図と元となる構造図との照合が必須であり、高度な専門スキルを持つ施工管理職員が多くの時間を割く業務となっている。
一方、データグリッドは2017年の創業以来、生成AIの研究開発を継続しており、今回活用したVLM(※)技術は黎明期から先行して強化してきた領域である。
図面構造の理解や照合を高精度で行う独自技術を備え、今回の検証でも施工図と構造図の通り芯番号・寸法、構造体の符号や寸法などを対象に10数項目の照合を自動化する検証が行われた。
両社は今後、適用対象の建物用途や照合項目を拡大し、実用化に向けた開発を継続する方針だ。
※VLM:Vision-Language Model。画像とテキストを組み合わせて解析するAIモデルの総称。
AI導入で専門職負荷を軽減 建設DXの進展と課題をどう捉えるか
今回の検証結果は、建設現場におけるAI活用の有効性を示す事例の一つと言える。
検図工程は品質確保に直結する重要なプロセスでありながら、煩雑で属人的になりやすい。
AIが整合判定を担う範囲が広がれば、施工管理職員が専門的判断を要する工程に集中できるようになり、生産性向上につながりそうだ。
一方で、導入にあたってAIの判定結果をどのように実務へ反映するかは課題となるかもしれない。
建設領域は安全性の担保が不可欠であるため、AI判断の信頼性がどの程度許容されるか、運用ルールの設計が重要になるだろう。
また、照合項目や建物用途の拡大に向けては、さらなる精度検証とモデルの最適化が求められると考えられる。
それでも現場の労働力不足が続く中、検図のような定型的かつ時間を要する業務でAIが役割を果たせる意義は大きい。
技術の成熟と実証が進むほど、AIが建設生産プロセスに組み込まれる領域は拡大し、建設DXの加速につながる可能性がある。
今回の取り組みは、その方向性を示す象徴的な一歩と言える。
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