読売新聞社が国産AI基盤を提言 官民連携で「第三の道」構築へ

2025年12月15日、読売新聞社は生成AIを巡る提言「『信頼できる生成AI』との共生に関する提言」を公表した。
米中主導が進む生成AI分野で、日本が自律性を確保するため、国産AIの基盤モデル開発を官民一体で進める必要性を訴えている。
読売新聞社、国産AI基盤モデルの官民開発を提言
提言は、生成AIの開発と利用が米国と中国に大きく依存している現状に警鐘を鳴らし、日本が主体性を持つ体制の構築を求めた。
海外モデルへの過度な依存は、国際関係の変化次第で利用制限や安全性低下を招く恐れがあると指摘する。
そこで柱に据えられたのが、国産の大規模言語モデルを含む基盤モデル(※)を官民一体で開発する方針だ。
日本語による正確な情報を最大限活用すべきと主張し、日本社会に根付いた倫理観・価値観を反映することにもつながるとしている。
学習データについても、英語圏中心の海外モデルとは異なり、国内製造業などが保有する高付加価値データの活用を提案した。
将来的には各国の「信頼できるAI」が相互接続する国際ネットワークを構築し、米中主導以外の「第三の道」を確保する構想を描いている。
加えて、雇用削減や賃金の低下に対する雇用対策や、生成AIに依存して思考停止に陥らない教育の必要性も訴えられた。
※基盤モデル:生成AIの中核となる大規模言語モデルなどの汎用的AIモデル。多様なアプリケーションの土台として機能し、学習データや設計思想が社会的影響を左右する。
自律性確保の一方で課題も 制度整備と人材戦略が鍵に
本提言の最大のメリットは、生成AIを「経済効率」や「利便性」だけでなく、国家の自律性や社会的信頼の問題として正面から位置づけた点にある。
米中主導の基盤モデルに全面依存する構造は、国際関係の緊張や規制変更によって突如リスクへ転化し得る。
その脆弱性を明示し、官民連携による国産基盤モデルの必要性を打ち出した意義は小さくない。
一方で、デメリットも明確だ。基盤モデル開発は莫大な計算資源と継続的投資を前提とし、官民連携が官主導に傾けば、技術革新のスピードや柔軟性が損なわれる懸念がある。
また「日本的価値観」をAIに反映させるという理念は抽象度が高く、実装次第では過度な内向き設計や国際競争力の低下を招く可能性も否定できない。
今後、国産AI基盤構想が実効性を持つかどうかは、国家主導の「保護政策」になるか、国際協調を前提とした「選択肢の拡張」に留まるかで分岐すると考えられる。
国内で培った基盤を国際的な信頼ネットワークへ接続する設計が進めば、日本は標準や運用思想の面で独自の存在感を示す余地があるだろう。
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