81プロデュース×イレブンラボ提携 声優の声を守り、AIで世界へ広げる

2025年12月15日、日本の声優事務所81プロデュースと音声AI企業イレブンラボジャパンが業務提携を発表した。国内の声優の音声を正式に登録し、声質を保ったまま多言語展開を行う。声の権利保護と日本発コンテンツのグローバル化を同時に進める新たな試みとなる。
81プロデュースとイレブンラボが業務提携
81プロデュースとイレブンラボジャパンは、所属声優の音声を公式に登録し、AI技術を用いて多言語化する業務提携を開始した。81プロデュースは声優本人の同意のもと、必要に応じて音声を登録し、イレブンラボは多言語生成のためのプラットフォームと技術を提供する。
両社は、日本語コンテンツをオリジナル声優の声質や演技表現を維持したまま世界に届けることを目的とする。背景には、声優の声が無断でAIに利用される事例が増え、声の保護が業界全体の課題となっている現状がある。
創業45年で400人以上の声優を抱える81プロデュースが主導することで、業界に一定の指針を示す意味合いも大きい。イレブンラボは、デジタル透かしやC2PA準拠(※)の仕組みを活用し、音声の真正性を担保する技術を持つ。これにより、不正利用を防ぎながら、最大29言語への多言語展開が可能になるとされている。
本提携は単なる技術導入ではなく、日本の声優文化やアフレコ文化を守りつつ、コンテンツ産業の国際展開を支える基盤づくりとして位置づけられる。
※C2PA準拠:生成コンテンツの出所や真正性を証明する国際標準。音声や画像が正規に作られたものであることを示し、不正利用やなりすましの防止を目的とする。
声優文化は拡張されるか 利点と課題
今回の取り組みは、声優の声を正式に管理しながら、海外展開のスピードや効率を高める可能性を持つ点が評価できる。
従来、吹き替えはコストや制作期間の面で負担が大きかったが、AIを活用することで制作現場の効率化につながる余地がある。
声優本人にとっても、権利を守りつつ新たな収益機会につながる可能性が示されている。
一方で、AIによる多言語化が進むことで、声優の仕事が減少するのではないかという懸念も残る。ただし、本モデルは声優の演技を起点に活用範囲を広げる設計であり、従来の仕事を完全に代替するというより、補完的な位置づけになると見る向きもある。
今後、「日本語の声」と「多言語の声」を併せ持つ「ハイブリッド声優」という考え方が業界に浸透すれば、日本発コンテンツの国際競争力を高める一因となる可能性がある。
文化の継承とAI活用のバランスをどのように保っていくかが、引き続き重要な論点となりそうだ。
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