Stripe、AIエージェント横断の販売基盤を発表 決済インフラが「AI商取引」に対応

2025年12月12日、米決済大手Stripeの日本法人であるストライプジャパンは、複数のAIエージェントを横断して販売できる新ソリューション「Agentic Commerce Suite」を発表した。AIが購買主体となる新たな商取引モデルを見据える。
Stripe、複数AIエージェント対応の販売・決済基盤を公開
Stripeが発表したAgentic Commerce Suiteは、企業が単一の統合で複数のAIエージェントを通じた販売を可能にする新たなコマース基盤である。エージェンティック・コマース(※)と呼ばれる、AIが消費者に代わって商品探索や比較、購入までを担う購買形態の実装を現実的なものにする。
Stripeは先行して、AIエージェントと企業間の技術的な共通言語となるAgentic Commerce Protocol(ACP)(※)を公開してきた。しかし実運用では、AIエージェントごとに異なる統合要件や決済仕様が障壁となっていた。Agentic Commerce Suiteは、こうした断片化をローコード導入で吸収し、企業側の開発負担を大きく軽減する。
本スイートは共有決済トークンにも対応し、AIエージェントが購入者の決済情報を安全に企業へ引き渡すことを可能にする。これにより、決済処理の信頼性と拡張性が担保される設計となっている。
すでにCoachやEtsy、Wix、SquarespaceなどのブランドやECプラットフォームが対応を表明している。
※エージェンティック・コマース:AIエージェントが人に代わり、商品探索や比較、購入までを自律的に行う新しいオンライン購買形態。
※Agentic Commerce Protocol(ACP):AIエージェントと企業間の取引を標準化するためにStripeが公開したオープンな技術仕様。
利便性と統制の両立が課題 AI主導コマースの行方
Agentic Commerce Suiteは、購買体験の効率化に寄与する可能性がある。
消費者は検索や比較の負担を軽減でき、企業側もAIエージェントを介した新たな顧客接点を模索しやすくなると考えられる。
特に中小事業者にとっては、複数のAIエージェントへの対応を一括で行える点が、競争力向上につながる余地がある。
一方で、購買判断をAIに委ねることで、意思決定プロセスが見えにくくなる懸念も指摘されている。
選定基準が不透明なまま運用が進めば、価格戦略やブランド価値の管理が従来より複雑化する可能性がある。
決済基盤を提供するStripeには、透明性や安全性をどのように担保するかが今後の課題となりそうだ。
将来的にAIが経済活動において重要な役割を担うようになれば、決済や認証といった金融インフラの重要性は一段と高まるとみられる。
Stripeの今回の取り組みは、コマースの設計思想が人中心からAI中心へと移行しつつある流れを象徴する動きの一つと言える。
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