トヨクモクラウドコネクト、須恵町で「申請補助AI」実証 自治体DX効率化

トヨクモクラウドコネクト株式会社は、福岡県須恵町と共同で実施した「申請補助AI」の実証実験レポートを公開した。
給付金申請における事前審査を対象に、AIが担える業務範囲と精度を実データで検証した国内自治体の取り組みである。
申請補助AI実証で441件を検証、本人確認97%が一致
2025年12月12日、トヨクモクラウドコネクトは、須恵町と共同で給付金申請に関する「申請補助AI」の実証実験を実施し、その結果をまとめたレポートを公開した。
申請補助AIは、実験開始当初「審査AI」と呼ばれていたが、今回の実証を機に名称を変更している。
実証では、実際の給付金申請データを用い、AIが一次審査前の事前審査を自動で行い、その結果を人が全件確認する方式が採られた。
本人確認の事前審査では441件を対象とし、このうち431件が人の確認でも「問題なし」と判断された。一致率は約97%であった。
一致しなかった10件についても、人による最終審査を前提とした運用であり、AIが最終判断を行うことはない。
口座確認の事前審査では精度がさらに高く、441件中434件が「問題なし」と判定された。
また、オンライン申請の提出時間帯を分析した結果、開庁時間内の申請は172件(36.4%)、開庁時間外は301件(63.6%)であり、6割以上が夜間や休日に行われていた。
申請補助AIは、これら開庁時間外の申請についても受付直後から事前審査を実行し、不備があれば即時に通知する仕組みとなっている。
レポートでは、AIが自動化できた業務領域、AIが判断を保留し人へ引き継いだ領域、人による確認時の正誤結果などが、実運用に近い形で整理されている。
事前審査自動化がもたらす効率化と運用上の課題
今回の実証結果は、自治体における申請審査業務の効率化に具体的な示唆を与えるものとなりそうだ。
事前審査をAIが担うことで、職員は判断業務に集中しやすくなり、申請処理全体の平準化が期待できる。
特に、開庁時間外の申請が翌朝には確認可能な状態で引き継がれる点は、業務負荷の偏りを抑える効果があると言える。
一方で、AIと人の判断が一致しなかったケースが一定数存在することも事実である。
これらをどのように分析し、精度向上やルール設計に反映させるかが、今後の運用における課題となりそうだ。
また、AIに任せる範囲を明確に区切り、人の最終確認を前提とした体制を維持することが不可欠となるだろう。
実証結果を踏まえると、申請補助AIは意思決定の代替ではなく、審査前工程の整理・効率化を主眼に置いた仕組みとして設計されていると評価できる。
この考え方が他自治体にも広がれば、自治体DXは段階的かつ現実的に進展する可能性がある。
AIと人の役割分担を前提とした運用モデルが、今後の行政実務における一つの基準になるかもしれない。
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