Spotifyでユーザーがアルゴリズムをコントロール可能に 新機能「Prompted Playlist」で新時代のユーザーコントロールを追求

2025年12月10日、米Spotifyはユーザーの自然言語入力から自動で選曲する新機能「Prompted Playlist」を発表した。
アルゴリズムを言葉で直接操作できる初の仕組みで、11日よりニュージーランドのPremium利用者にベータ版として提供が始まる。
自然言語でアルゴリズムを操作できる「Prompted Playlist」開始
Spotifyは、自然言語でプレイリスト条件を指定できる新機能「Prompted Playlist」を公開した。
従来もDiscover WeeklyやSmart Shuffleなど個別最適化機能を提供してきたが、ユーザーが能動的にアルゴリズムを制御できるのは今回が初となる。
特徴は、これまでの受動的学習ではなく、ユーザーの指示そのものがプレイリスト生成ロジックに反映される点である。
たとえば「過去5年間で最も聴いたアーティストの未視聴の曲を中心に」といった複合条件や、「30分間の5キロランニング用に、一定のペースを保つ高エネルギーなポップとヒップホップを収録。クールダウン時にはリラックスできる曲へと移行」といった時間軸を含む細かな指示まで受け付ける。
また、この機能はユーザーの全リスニング履歴を参照し、嗜好の長期的変化まで考慮した選曲を行う。各楽曲には推薦理由や背景が表示され、プレイリストの構造や意図が可視化され、透明化を図る。
ユーザーはプロンプトを編集して結果を微調整でき、更新頻度も日次・週次で選択可能だ。
提供開始時は英語ベースのアルゴリズムで動作し、Spotify編集チームによる多様なサンプルプロンプトも用意される。今後は対応地域の拡大と機能改善を段階的に進める予定とされる。
個別最適化の進化と発見導線 創造的選曲の拡張とリスク
Prompted Playlistは、パーソナライズの主導権をユーザーに戻す試みであり、選曲体験の自由度を大きく押し上げる可能性がある。
特に、90億近いプレイリストを生み出してきたユーザー文化と生成AIの組み合わせは、創造的な選曲行動を後押しし、長期的には音楽発見のルート多様化につながると考えられる。
アーティスト側にとっても恩恵は大きい。従来のレコメンドが見落としていた文脈で楽曲が提示されることで、適切なファン層にリーチが広がる可能性がある。
一方で、プロンプトの書き方が結果に強く影響するため、ユーザーの語彙や指示精度に依存するリスクも残る。
偏った指示が恒常化すれば、発見範囲が過度に狭まる懸念も否定できない。
また、Spotifyが取得する履歴データの活用領域がさらに拡張されることで、プライバシーに関する議論も強まると見込まれる。
ただ、多くのWebプラットフォームにおいて、ユーザーにどんなコンテンツを勧めるのかを決めるアルゴリズムは暗黙であることが多い。
その中で、Spotifyの「ユーザーにコントロールを」という姿勢は、独自性も正当性も持ち合わせていると言える。
この取り組みの反響次第で、他のプラットフォームにもこの流れが波及する可能性もありそうだ。
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