AIが心の習慣をデザイン ピノビスタ「Welloom」ベータ版が行動変容を支援

長野県のピノビスタがAI×ポジティブ認知行動療法を取り入れたメンタルヘルスケアアプリ「Welloom」のベータ版を公開した。ブラウザだけで使える認知行動療法のサービスとして注目される。
AIが思考と行動を整理 Welloomベータ版が公開
2025年12月11日、ピノビスタは、AIがユーザーの思考や感情に寄り添うメンタルヘルスケアアプリ「Welloom」のベータ版リリースを発表した。スマートフォンに最適化されたブラウザアプリで、ダウンロードなしですぐに利用を開始できる。
同社は2026年1月中旬に正式版を公開する予定だ。
Welloomが採用するポジティブ認知行動療法(ポジティブCBT)は、日常にあるポジティブな要素に焦点を当て、思考や行動を前向きに変える心理アプローチとして知られる。
その理論を組み込んだAIコーチング機能では、気分や出来事を入力すると、AIが構造的な振り返りや改善の行動案を提示する。
加えて、長期目標を可視化する「マイルストーン機能」も提供される。設定した目標に対してAIが段階的な行動ステップを提案し、達成度に応じたフィードバックも返す仕組みだ。
正式版では、AIの解析精度を高め、行動パターンに応じた個別最適化が進む見通しだ。感謝日記や記録機能、ダッシュボード機能、セルフチェックができる診断機能などの拡充により、日々の心の変化を可視化できるようになるとされる。
他にも、法人向け展開も視野に入れており、企業の従業員支援やメンタルヘルス施策に組み込める仕組みを整える予定だ。
初回アンケート協力者には、正式版のプレミアムプランが無料となる特典が付与されるとのことだ。
AIメンタルケアは生活インフラ化へ 精度向上と法人利用が焦点に
Welloomの特徴は、ポジティブ認知行動療法という確立した心理アプローチをAIに落とし込み、日常的な感情整理を手軽に行える点にある。従来、心理的セルフケアは習慣化の難しさが壁となってきたが、スマートフォンだけで即時にアクセスできるデザインは、行動変容のハードルを大きく下げる利点を持つ。
さらに、AIが構造化した振り返りや行動案を提示することで、ユーザーが自分の状態を俯瞰しやすくなる効果も期待される。この点は、個人の内省を継続させる伴走者として機能する可能性が高いと考えられる。
一方で、AIによるメンタルケアが生活に浸透するほど、「どこまでAIが人の感情に介入すべきか」という倫理的課題も大きくなる。心理状態というセンシティブな領域を扱う以上、ユーザーの判断力を阻害しないよう、透明性と操作の主体性が守られる設計が不可欠になると言えるだろう。
また、AI解析の精度向上が進むほど、個人データの集積と活用に関する倫理的な負荷も増していくため、プライバシー保護の仕組みは強固に保つ必要があると考えられる。
WelloomはAIメンタルケアの将来像を示す試金石の一つとなる可能性がある。
ただし、その発展が健全であるためには、利便性だけでなく、心理的安全性とデータ倫理を同時に充実させる姿勢が不可欠になると見られる。
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