マイナビ、オンライン研修「文系AI塾」開催 社員のAI活用実践力向上へ

株式会社マイナビは、全社員を対象に進めるデジタルポータブルスキル(DPS)プログラムの一環として、3カ月間のオンライン研修「マイナビ文系AI塾」を初開催したと発表した。約900名が参加し、AI活用能力が大幅に向上したという。
900名が参加しAI日常活用レベルが大幅上昇
2025年12月11日、マイナビは「マイナビ文系AI塾」の成果を発表した。
急速なDXの進展により、AI・ITの活用は全社員に求められる基礎能力となっている。同社はこれを「デジタルポータブルスキル(DPS)」と位置づけ、職種を問わずデジタル活用力を底上げする方針を掲げる。
本研修はその一環として全従業員のAI実践力を高め、業務改革を広く浸透させることを目的に実施された。
マイナビは2025年7月からデジタル人材育成を強化しており、その中心施策として「マイナビ文系AI塾」を初めて実施した。講師にはExecutive AI Adviserの野口竜司氏を迎え、生成AIの基礎から業務改善に直結する実践スキルまで体系的に学べる構成となった。
全5回のオンライン講義は任意参加で募集されたものの、約900名の社員が自発的に参加した。
研修ではプロンプト(※)作成の基礎、現場事例、自身の業務へのAI導入、カスタムAIアプリ企画など、業務変革につながる内容が段階的に提供された。
受講前後の自己評価を比較すると、AIキホン理解能力は50pt以上、AIプロンプト力は37pt増加するなど、全6項目で大幅な伸びを記録した。特に「日常業務でAIを使いこなせるレベル」に該当するスキル領域の改善が顕著であり、研修が実務に直結した効果を示していると言える。
全従業員を対象に実施したアンケートでは、53期(2025年8月時点)で「日常業務でAIを活用できる」と回答した社員は53.7%にとどまるが、同社は54期に80%、55期に85%、56期には90%へ引き上げる計画を明示している。
また、第2回「マイナビ文系AI塾」の開催も2026年以降に予定しているとのことだ。
※プロンプト:生成AIに指示を与える文章や条件設定のこと。表現の精度により結果の品質が大きく変わる。
全社のAI実装力向上へ 第二期開催と90%活用体制を目指す
文系AI塾の成果は、業務効率化を超えて組織の創造性向上へ波及する可能性がある。
AIリテラシーの底上げは、属人化していた業務を見直し、新しい価値創出に踏み出す下地になると考えられる。
一方で、研修によるスキル向上はあくまで出発点にすぎず、現場のプロセス刷新やデータ基盤の整備が追随しなければ、AI活用は部分的な効率化にとどまる恐れがある。AI活用効果を全社に定着させるには、部門横断の基準づくりや倫理面の運用ルール整備も欠かせないだろう。
とはいえ、今回の900名規模の動きは、確実に組織的な慣性を変化させた出来事であると言える。マイナビがAIネイティブな組織へと変革を遂げられるか、今後の取り組みにも注目したい。
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