NTTデータ北海道、札幌市の旅費事務にAIエージェント導入実証開始 行政DXへ

2025年12月10日、NTTデータ北海道とNTTアドバンステクノロジは、札幌市で旅費事務の効率化を目的としたAIエージェントの実証実験を実施すると発表した。生成AIとRPAの連携により、行政手続きの自動化が一段進む見通しだ。
札幌市で生成AIとRPAを組み合わせた旅費事務実証が始動
今回の取り組みは、SAPPORO CO-CREATION GATEを通じて提案され、札幌市との調整を経て実施が決定した。本実証は2025年11月28日から2026年3月31日までを予定し、行政内部の旅費関連業務を対象に、AIエージェントの有効性を測定する狙いがある。
対象となる旅費事務は、行程の整理、旅費計算、交通機関の手配、財務会計システム入力など複数工程で構成される。
札幌市では規程が複雑で担当部署によって業務頻度が大きく異なるため、制度理解の差が生じやすく、誤り訂正や資料作成が負担となってきた。
実証環境では、対話アプリケーションを入口に、WinActorが業務フローを制御し、RelAiナレッジアシスタントが旅費規程類をRAG(※)として参照しながら回答を生成する。
これら三つの仕組みが連動し、申請者との対話を通じて旅程候補を提示するよう設計されている。
検証ポイントは、作業時間の削減、提示される旅程の妥当性、そして実務適合性に関する課題の抽出である。結果を踏まえ、NTTデータ北海道とNTT-ATはサービス改善を進め、全国の自治体に展開する構想も示されている。
※RAG(Retrieval-Augmented Generation):文書検索と生成AIを組み合わせて回答を生成する手法。
行政DXの加速要因に 効率化と運用負荷の両面から見える課題
AIエージェントの活用により、旅費事務における職員間の経験差や知識不足による誤りを減らす効果が期待できる。特に出張頻度が少ない部署では、制度理解の学習コスト削減や短時間での作業完了が可能となり、人的リソースの最適化に寄与する可能性が高い。
一方で、AIエージェントを導入する際には規程の読み違いを防ぐ仕組みが欠かせないだろう。
自治体特有のローカルルールが反映されていない場合、誤った案内を自動で提示するリスクも残る。適用範囲や利用条件を慎重に設定する必要があるといえる。
また、事務作業の依存度が特定システムに集中すると、運用上のトラブルが業務全体に波及する懸念もある。冗長化やフェイルセーフ設計が十分に確保されているかどうかが、導入効果を左右する重要な要素となるだろう。
それでも、自治体における実証が進むことで、AIエージェント活用の最適な運用モデルが形成される可能性がある。成果が全国へ展開されれば、行政サービスの提供体制を大きく変える契機になりそうだ。
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