OpenAIがSlackの前CEOをCROに起用 企業AI導入拡大へ収益体制を強化

2025年12月9日、米OpenAIはスラック前CEOのデニス・ドレッサー氏を最高収益責任者(CRO)に任命したと発表した。
企業向けAI採用が世界的に拡大する中、収益モデルの強化と導入支援体制の再構築を狙う施策である。
OpenAI、企業AI事業拡大へスラック前CEOを収益統括に任命
OpenAIは急成長する企業向け事業の強化に向け、デニス・ドレッサー氏をCROに起用した。同氏はSlackのCEOとしてSalesforceとの統合を主導し、ビジネス用途のAIの普及を牽引した経験を持つ。
今回の任命は、OpenAIがエンタープライズ領域の拡張を次の成長軸と位置付けたことを示す動きである。
同社によれば、ChatGPT for Work(※)やAPI連携を利用する企業は100万社を超え、WalmartやMorgan Stanley、Intuit、Databricksなど大手企業が業務プロセスへのAI統合を進めている。
調査では、AI導入によって75%の従業員が「作業速度または品質が向上した」と回答し、多くの人が40〜60分の業務時間を短縮した効果が報告された。
企業利用が急増する中、その収益化と支援体制を統括する役割としてCROポジションが重要になっている。エンタープライズ需要に答えるため、OpenAIは営業・顧客成功・導入支援を統合した収益体制の強化を急ぐ。
アプリ部門CEOのフィジー・シモ氏は「AIが働き方の基本インフラになる段階に入った私たちはあらゆる業界の何百万もの労働者にAIツールを提供するための道を進んでいる」と述べ、ドレッサー氏の経験が大規模導入を加速させると評価している。
ドレッサー氏も「OpenAIが企業変革の次の段階へ進むにあたり、私の経験を活かせることを楽しみにしている」とコメントし、企業AI市場の本格拡大に向けた意欲を示した。
※ChatGPT for Work:企業向けChatGPTプラン。組織管理、データ保護、高コンテキスト処理などを提供。
企業AIの定着が進む一方、競争加速と導入負荷の増大も課題に
今回の人事は、OpenAIが企業市場での主導権を確固たるものとするうえで重要な一手となるだろう。
ドレッサー氏の強みである大規模顧客支援や導入スケールの実績は、ChatGPT for Workの普及を加速させ、企業のAI導入コストや心理的障壁を下げる効果が期待される。
その一方で、今回のCRO体制に見えるような企業市場への深いコミットには固有のリスクもある。営業・サポートの高度化に伴い、OpenAI自身が提供責任の範囲を拡張することになるため、サービス障害や精度問題が発生した際の影響は従来より大きくなると予想できる。
OpenAIが今後どこまで業界特化型ソリューションを提供し、信頼性・持続性の面で優位性を築けるかが、CRO体制の成果を左右しそうだ。
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