企業の技術文書から発明を量産するAI基盤 リーガルテックが「AI発明工場」を本格始動

2025年12月9日、東京都港区のリーガルテック株式会社が、企業の技術文書を発明に変換する「AI発明工場(AI-IP Factory)」の提供開始を発表した。国内の研究開発現場で埋もれがちな知識資産を可視化し、無形資産として体系化する仕組みが示された。
発明創出をAIで標準化する統合基盤を事業展開
リーガルテック社は、発明創出・特許分析・技術文書管理を一体化させた統合基盤を企業向けに提供し始めた。
今回の発表では、IPGenius、MyTokkyo.Ai、リーガルテックVDRの三つのプロダクトを連動させ、技術情報の加工から評価、共有までの工程を連続化する点が示された。
背景として、国際的に企業価値の大半が無形資産に偏りつつある状況がある。研究記録や技術メモが発明化されずに散在する問題が深刻で、技術価値を組織的に蓄積する体制が求められてきた。
リーガルテック社は、その課題に対応するため、生成AIと検索AIを基盤に据えた技術変換プロセスを構築してきた経緯がある。
IPGeniusは研究ノートから発明の核心を抽出し、構造化した発明情報を生成する機能を備える。
MyTokkyo.Aiでは世界の特許情報と比較し、差別化要素を整理できる。
リーガルテックVDRは技術文書のアクセス管理を行い、発明検討や社内審査を効率化する仕組みを担う。
さらに、同社は今後の展開として、業界別テンプレートやデータ基盤の強化を予告している。知財AIシリーズの連続リリースを見据え、幅広い産業領域での利用拡大を狙う構えだ。
発明生成の効率化とリスク管理が企業競争力を左右する
今回の統合基盤により、研究部門から経営層までの情報流通が滑らかになり、意思決定の精度向上につながるだろう。発明候補の抽出が自動化されれば、属人的な判断に依存しない開発体制が築かれ、技術の探索範囲が広がる可能性がある。
技術テーマの検討速度が向上し、未開拓領域の把握が容易になる点もメリットだろう。
特許分析と発明創出が同じ基盤で完結すれば、研究の重複や抜け漏れが減り、事業部門との連携もスムーズになると考えられる。
一方、AIによる発明創出にはリスクも存在する。
解析精度が不十分な場合、誤った技術要素の抽出や既存特許と競合する提案が発生する恐れがある。こうしたリスクを抑えるには、AIモデルの継続的な調整と運用ガバナンスの確立が不可欠になりそうだ。
それでも、無形資産の重要性が高まり続ける現在、発明の創出力を底上げする基盤は多くの企業にとって魅力となるだろう。今後は産業ごとの導入効果が明確になり、組織の知的生産性そのものを再設計する動きが強まると見られる。
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