ネイチャー誌が「今年の10人」を発表 DeepSeek創業者などが選出

2025年12月8日、英科学誌ネイチャーが恒例企画「Nature’s 10」を公表した。
AIスタートアップ創業者や宇宙観測の先駆者、公衆衛生政策で注目を集めた人物など、今年の科学を象徴する10名が選ばれた。
AI・宇宙・公衆衛生が並ぶ「今年の10人」発表
ネイチャー誌は毎年、その年の科学の方向性を形づくった10名を選び、研究成果と社会的インパクトを顕彰している。2025年は米国・中国・欧州・アフリカ・ブラジルと地域も多岐にわたり、分野の広がりが特徴だ。
技術領域では、中国発AI企業DeepSeekを創業したリャン・ウェンフェン氏が唯一のビジネス領域代表として登場した。
投資家出身の同氏は、大規模AIモデルの研究開発競争に新たな軸を持ち込んだとされる。
公衆衛生では、米疾病対策センター(CDC)で evidence-based policy(証拠に基づく政策)を掲げたスーザン・モナレズ氏が選出された。
科学的根拠を堅持する姿勢が評価された格好だ。
基礎科学では、観測開始を迎えたベラ・ルービン天文台の中心人物トニー・タイソン氏が名を連ねた。
また、神経変性疾患の治療法開発を主導するサラ・タブリジ氏や、地球最深部の動物生態系を発見した中国のデュ・メンラン氏、ブラジルで感染症対策として大量の蚊を育成するルシアーノ・モレイラ氏も選ばれた。
さらに、ゲノム編集技術の一種で、DNA配列を精密に書き換える方法である「CRISPR」を用いた超個別化治療を受けた6か月の乳児KJ・マルドゥーンが選出された。
科学の多様化が進む中、AIと生命医療の加速が焦点に
今回の選出者から浮かび上がるのは、科学の中心が単一分野に偏らず、AI・宇宙・生命医療・公衆衛生が同時に進展する多極化の構図である。
特にAI領域では、中国企業の存在感が際立ち、技術の倫理やガバナンスの議論も加速するとみられる。
ネイチャー編集部は、2026年の注目人物として、ソニーAIのアリス・シアン氏を挙げており、倫理性を担保したデータセット開発が普及する可能性が高い。
生命医療分野では、超個別化遺伝子治療が実例を伴って議論の中心に入りつつある。
治験の迅速化や患者ごとの設計最適化が進む一方、規制体系が追いつくかどうかが課題になると考えられる。
また、公衆衛生と政策の関係は、2025年の米国情勢を背景に大きな議論を呼んだ領域だ。科学的根拠と政治的意思決定の溝をどう埋めるかは、主要国に共通するテーマとなるだろう。
多様な分野で科学者・実務者・技術者が台頭する構図は、研究機関だけでなく企業や政府組織が知のフロンティアに深く関与する時代を映している。
2026年はAIガバナンス、宇宙探査、ワクチン生産体制の強化など、国際協力と競争が複雑に絡む年になりそうだ。
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