NTTデータ北陸ら3者、災害時通信安定化を目指し実証実験を実施

2025年12月5日、NTTデータ北陸、NTTドコモビジネス、輪島市が共同で災害時の通信安定化と防災情報配信に関する実証実験を行うと発表した。先端技術を活用した本実証は、地域住民の安全確保と迅速な情報伝達の実現を目的としている。
ネットワークスライシングで災害時も映像・音声通信を安定化
本実証は輪島市内をフィールドとして、通信安定化技術「ネットワークスライシング」を用いた映像・音声伝送の検証を中心に進める。
NTTドコモビジネスが構築したスライシング技術を活用し、NTTデータ北陸の「減災コミュニケーションシステム®」を通じ、被災状況に応じた防災情報をリアルタイムで住民に配信可能かを確認する。
通信環境は、輪島市役所前駐車場に設置された移動基地局車とコミセンマリンタウンBASE間で模擬的に混雑状態を作り出し、安定した通信品質を維持できるかが検証対象となる。
映像伝送や音声放送に加え、サイネージでの情報配信も実施し、通常回線では困難な環境下での有効性を測定する。
さらに、Starlinkをバックホールとして用いることで、光ケーブルが断線した場合の代替通信手段としての有効性も検証される。災害時においても映像伝送や防災情報配信の継続が可能かを確認し、地域の防災体制強化に向けた技術的裏付けを得ることが狙いである。
各社の役割は明確化されており、NTTデータ北陸はシステム提供と地域調整、NTTドコモビジネスは通信技術の構築、輪島市はフィールド提供を担う。
今後はHAPS(※)などの先端技術も視野に入れ、さらなる通信インフラ強化が検討されるという。
※HAPS(High Altitude Platform Station):高度20km前後の成層圏で通信サービスを提供する航空機型または気球型の通信プラットフォーム。
災害通信の高度化が地域防災を変える可能性と求められる課題
今回の実証により、被災地での通信品質が安定化すれば、迅速な救助活動や復旧作業の効率化につながる可能性がある。
リアルタイム映像や音声情報が確実に伝わることで、行政や自治体の防災判断も迅速化できるだろう。地域住民の安心感向上にも寄与すると考えられる。
一方で、衛星回線を含む多重経路の利用にはコストがかかるため、自治体の導入負担が課題となるかもしれない。高度なネットワーク技術を運用するには専門知識を持つ職員体制も必要と考えられるため、普及には標準化と運用支援の拡充が欠かせないだろう。
さらに、複数システムを連携させる以上、平時からの検証体制や訓練が不可欠になる。情報伝達が多層化することで、現場のオペレーションが複雑化する可能性もあるため、ユーザーインターフェースの統一や運用負荷の低減が求められそうだ。
それでも、衛星通信・移動基地局・スライシングという組み合わせは、従来の地上ネットワークに依存する仕組みを補完しうる有望な選択肢と言える。
今後、通信途絶リスクを最小化する技術は、地域防災戦略の中核を担うと予測できる。
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