トランプ政権、AI規制を全米統一へ 企業の法対応負担が大幅軽減か

2025年12月8日、米国のドナルド・トランプ大統領が、AIルールを全米で統一する大統領令を今週中に発令するとSNS「Truth Social」で公表した。州ごとの規制差を解消し、企業のコンプライアンス負担を抑える狙いがあるとみられる。
トランプ氏がAI規制統一を明言 州法との衝突に懸念も
トランプ大統領は投稿で、AIに関する規制を全国で一本化する方針を示した。
ただし、大統領令がどの領域に適用されるか、どこまで州規制を抑制するのかは明らかにされていない。企業が州ごとに異なるルールへ対応する負荷を減らすという意図は読み取れるが、詳細は依然として不透明である。
背景には、急速に普及するAIが生活や産業のさまざまな領域に浸透する中、州が独自規制を相次ぎ導入している現状がある。性的ディープフェイク(※)の作成を処罰する法律、医療費請求におけるAI審査の制限など、対応は州ごとに大きく異なる。
連邦議会は国家レベルのAI規制法案をいまだ可決しておらず、統一基準が存在しないことが混乱を招いている状況だ。
一方、州の規制権限を弱めることへの反発も根強い。
Center for Democracy & TechnologyのTravis Hall氏はCNETに対し、議会が州規制を禁じる法案を否決した直後であり、「大統領は、これが誤った、不評かつ危険な政策判断だと認識すべきだ」と批判した。同氏は、州が「説明責任の乏しいAI」から市民を守る役割を担う必要性を強調している。
※性的ディープフェイク:AIで個人の顔を合成し、本人の同意なく性的な画像や動画を生成する行為。複数州で刑事処罰の対象となっている。
AI統一規制の影響 企業の恩恵と州権限低下のリスク
連邦レベルでAI規制が統一されれば、最も恩恵を受けるのは全米で事業を展開するテック企業だろう。州ごとに異なる法に対応するためのコストが削減され、製品開発のスピードが加速する可能性がある。
GoogleやMeta、OpenAIなどは「国家基準の制定」を求めているが、背景には、この負担軽減への期待があると考えられる。
一方、州の裁量が小さくなれば、地域固有の課題に即した保護措置が弱まるリスクがある。特に、ディープフェイク被害や差別的アルゴリズムなど、すでに複数の州で問題化している領域では、連邦基準が緩すぎる場合に安全性が後退する懸念が残る。
Hall氏が指摘するように、州議会が現実の被害をもとに規制を調整する機能は欠かせないだろう。
今後の焦点は、大統領令がどの法的範囲で「州法より優先される」と位置づけるかにありそうだ。連邦議会は12月上旬、州AI規制への干渉を行わない姿勢を示したばかりであり、行政と立法の判断がずれる可能性もある。
AI競争力の強化と市民保護のバランスをどこに置くかが、2026年以降の米国AI政策を大きく左右するだろう。











