九州が第3のDCハブへ 日鉄興和不動産が初のデータセンター開発に参画

2025年12月9日、日鉄興和不動産(日本・東京)は、アジア・パシフィック・ランド(ジャパン)が進める九州の大規模データセンター開発事業に初めて参画すると発表した。急増するAI計算需要に対応する新たなインフラ整備として注目されている。
九州で120MW級DC開発が始動 日鉄興和不動産が第1号案件に参画
日鉄興和不動産は、九州地方でデータセンターハブの形成を目指す「九州デジタルゲートウェイファンドPJ」に参画し、同社初となるデータセンター開発に乗り出した。
同社は物流施設「LOGIFRONT」を中心に産業用不動産を展開してきたが、研究施設や工場などへ事業領域を広げており、今回の参画はその拡大戦略の一環となる。
本事業は、福岡県北九州市と糸島市においてAI企業やハイパースケールクラウド向けの大規模データセンターを整備する計画の第1号案件である。
九州北部は国内最安水準の電力料金、豊富な再生可能エネルギー、東京・大阪とは異なる地理的優位性を備え、韓国・釜山やアジア主要都市へ海底ケーブルで直接接続できる点が評価されてきた。
こうした条件が、国内第3のデータセンターハブとしての形成を後押ししている。
今回発表された「VOLTAプロジェクト」では、北九州市若松区ひびきの北に約6haの敷地を確保し、総容量120MWのデータセンターを建設する。
稼働時期は2029年を予定し、AI計算のさらなる拡大に備えた基盤整備が進むことになる。
電力優位が追い風に 九州DC化の進展と潜在リスクを読む
AIやクラウド基盤の需要増に伴い、電力コストや再エネ調達のしやすさは、データセンター立地を左右する重要な指標となりつつある。
九州は国内でも比較的電力料金が低く、再エネ比率も高いことから、DC誘致が進む可能性は引き続き高いとみられる。
また、アジアに近い地理的特性は、東アジアのデータ流通拠点として注目される余地を広げている。
一方で、DC集積が急速に進む場合、地域の電力網や上下水道などインフラへの負荷増大が懸念される。
需要の伸びに対し、送電網の増強や用地確保が追いつかないリスクも指摘されている。
また、アジア地域の地政学的変動が大きくなれば、海外接続を強みとする九州DCのリスク評価に影響が及ぶ可能性もある。
それでも、AI計算の高度化やクラウド需要の拡大に伴い、国内のDC立地が分散化していく方向性は避けがたい。こうした流れの中で、九州の存在感が中長期的に高まる可能性は十分にある。
今回の参画は、同地域が次世代インフラ拠点として位置づけられる余地を示す動きと捉えることもでき、国内デジタル基盤の分散化を後押しする一因になりうる。
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