U-ZEROがAIでフィードバックの質を可視化 新機能でエンゲージメント改善へ

2025年12月8日、従業員エンゲージメント向上を支援する日本企業U-ZEROは、AIでフィードバックの質を可視化する新機能「フィードバックモニタリング」を正式に提供開始した。日本企業の慢性的なエンゲージメント低迷に対し、改善の指標を提供する狙いがある。
AIがフィードバックの質を診断し組織の課題を可視化
U-ZEROは自社のAIソリューション「U-ZERO Engagement Suite」に、新機能「フィードバックモニタリング」を追加したと発表した。同機能は、上司やメンターが日常的に行うフィードバック内容をAIが解析し、頻度だけでなく“質”の傾向までスコア化する仕組みである。従来は把握が難しかった指導の偏りや改善度合いを客観的に示す点が特徴だ。
背景には、日本の従業員エンゲージメントが世界最低レベルにあるという課題がある。ギャラップ調査では日本のエンゲージメント率は5.2%にとどまり、国際平均を大きく下回る。U-ZEROは2025年5月から同Suiteを提供しており、これまで7社が導入しているが、今回の機能拡張により、より具体的に指導品質を可視化できる環境が整った。
新機能は「個人診断カルテ」と「比較診断カルテ」で構成される。前者では指導者ごとのフィードバック実施状況や質の推移を時系列で確認でき、後者では部署間の差異を比較表示し、組織的な課題を早期発見できる。経営層や人事部が改善施策を立案する際の基盤として機能することが期待される。
質の循環がエンゲージメントを左右 AI導入に潜む期待と注意点
フィードバックの質を継続的に測定できる点は、組織文化の変化を後押しする可能性がある。指導者自身が強みと弱みを客観視しやすくなることで、コミュニケーションの改善が促され、結果として従業員の成長実感が高まりやすくなると考えられる。
一方で、スコア化が進むほど、指導行為が“評価のための行動”に偏るリスクも指摘されており、AIによる分析結果をどのように位置づけ、運用するかが重要になる。
また、部署比較カルテの導入は課題発見を容易にする反面、部門間の序列意識を刺激する可能性もある。こうしたデータの扱いには透明性が求められ、企業側は測定の目的や活用方針を明確に示すことが望ましい。
ただし、質の高いフィードバックが循環する組織ではエンゲージメントが向上しやすく、長期的には離職率の低下や生産性向上につながる可能性もある。
U-ZEROは年度内に「エンゲージメントサーベイ」など追加コンポーネントを投入する予定で、“本音データ”を多面的に扱える環境の整備が進みつつある。日本企業に根強い「声が届きにくい」状況に対してどこまで変化を促せるか、その進展には引き続き注目が集まりそうだ。
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