ゆうちょ銀行がAI画像分析を拡張 通話検知と送金停止で特殊詐欺対策を強化

2025年12月8日、SocioFutureグループとゆうちょ銀行がAI画像分析を活用した特殊詐欺対策の強化策を発表した。警察庁の協力体制を基盤に、2026年1月からATMでの通話検知に基づく送金停止措置を導入する予定だ。
AI分析による通話検知と送金停止を2026年に段階導入
ゆうちょ銀行とSocioFutureグループが既存の画像解析基盤を発展させ、ATM前での通話行動をより精緻に把握する仕組みに移行する段階を示した。
防犯カメラ映像をリアルタイムで解析する体制はすでに全国で稼働しているが、今後は検知後の対応レベルを引き上げる方針が打ち出された。
具体的には、2026年1月以降、送金手続き時のATM画面に警告表示を追加するほか、サイネージに定期的な注意喚起コンテンツを流す設計が加わる。警察庁と連携した啓発素材の運用頻度を高めることで、現場での心理的ブレーキを強化する狙いがある。
通話と判断される動作が検知された場合には、従来どおりサイネージへの警告表示と音声アラートを発出するが、必要に応じて取引そのものを中止する措置が盛り込まれた。
行動パターンの分析精度向上により、詐欺リスクが高いと判断されたケースで介入する仕組みへ進化する点が特徴だ。
啓発コンテンツには、警察庁特殊詐欺被害防止プロジェクト「SOS47」メンバーの橘慶太氏が出演する映像が採用され、全国のゆうちょ銀行ATMコーナー約4,400台で毎日2回放映される。露出の安定化によって、利用者の詐欺被害認知を高める構成になっている。
強化策が生む防犯効果と運用上の課題 利用者体験にも影響
AIによる送金中止は、詐欺に巻き込まれる前の介入を可能にするため、実効的な防犯効果が期待できる。金融機関にとっても、被害発生後の補償や調査負担を減らせるため、運用効率の向上につながる可能性がある。
ただし、誤検知のリスクは避けられない。
動作や持ち物の判定が誤って扱われる可能性があり、正当な送金が中断されるケースが想定される。利用者の不満が高まる恐れがあるため、説明対応や運用基準の明確化が不可欠と考えられる。
また、映像解析を常時実施することに伴うプライバシーの懸念もある。ATMは生活動線に近い場所に設置されているため、解析の目的や管理体制を透明化することが、制度の受容性を左右するポイントになるとみられる。
さらに、詐欺グループが新たな手口を生み出す可能性もあり、技術だけで解決できない領域が残る。対面相談の活用や地域での啓発活動など、複数の対策を並行して進める必要があり、今回の強化策はその基盤を補強する位置づけといえる。
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