成田空港が旅客案内AIロボット実証 多言語案内と人手不足対応を検証

成田国際空港株式会社はICM-HUBとiPresenceと協力し、会話型AIを搭載した自律移動ロボットによる旅客案内の実証実験を開始した。日本国内の空港で、AIとロボティクスを組み合わせた案内サービスを検証する取り組みとして注目できる。
AI搭載ロボットが旅客案内を担う実証が第3ターミナルで開始
2025年12月8日から始まった今回の実証実験では、iPresenceの自律移動型ロボット「temi」にICM-HUBが開発した空港案内特化型の会話AIアプリを搭載し、旅客の問い合わせに自然な対話で応じる仕組みを採用した。実証は12月26日まで行われる。
案内の対象エリアは第3ターミナル2階のカウンター付近と、国際線エリアとなる3階の保安検査後エリアである。
背景には、空港運営における慢性的な人手不足がある。とりわけ、案内スタッフの確保は難易度が上がり、インバウンド需要の拡大に伴う多言語対応の必要性も増している。
さらに、空港利用者からの質問対応がテナント店舗に集中し、現場の負担が大きくなっていた。
今回の実証では、ロボットが館内を自律移動しながら、道案内や運行情報、各種サービスの確認などに即時対応する。そのうえで、利用者の受容性や回答の正確性、スタッフとの協働効果などを多角的に評価する。
案内業務の一部をフィジカルAI(※)に委ねる運用モデルを探り、今後の本格導入を目指す。
※フィジカルAI:ロボットなど物理的なデバイスにAIを搭載し、リアル空間で自律的に行動する技術。デジタルと現実の接点を高度化する取り組み。
フィジカルAIが空港運営を変える可能性と残る課題
ロボットと会話AIを組み合わせたフィジカルAIは、デジタルとリアルの接点を滑らかにする技術として注目が高まっている。
空港においては、言語の壁を低減しつつ、スタッフ不足の解消に寄与するという利点が大きい。案内業務の一部がAIに任されれば、人員をセキュリティや運行管理など高度な判断が求められる領域へ再配置する余地が生まれると考えられる。
一方で、ロボットの移動安全性や混雑環境での運用、誤案内リスクといった課題も残る。特に空港は利用者の多様性が大きいため、AIが誤認識した場合の影響も小さくないだろう。
運用ルールやスタッフとの連携設計が不可欠になりそうだ。
今回の検証が成功すれば、国内空港でロボット案内が広く普及する契機となり得る。
空港の次世代化に向けた一歩として、引き続き注目したい。
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