Xに1億2,000万ユーロの制裁金 EUが「青バッジ」誤認と透明性欠如で初のDSA非遵守決定

2025年12月5日、欧州委員会はSNS「X」に対し、デジタルサービス法(DSA)違反で1億2,000万ユーロ(約217億円)の制裁金を科したと発表した。
青バッジ表示の誤認設計や広告透明性の欠如、研究者へのデータ提供拒否が問題視された。
EU、XのDSA違反を指摘
欧州委員会は、XがDSAに定められた透明性義務に違反したとして、総額1億2,000万ユーロの制裁金を科した。
今回の判断は、欧州の偽情報を含むリスクへの対処を目的とした、DSA下で初めての正式な非遵守決定となる。
委員会はまず、Xが提供する「青バッジ」設計を「欺瞞的デザイン(※)」と位置づけた。
利用者が認証済みと誤解しやすい表示であるにもかかわらず、実際には有料加入で誰でも取得でき、本人確認が伴っていない点を問題視している。
これにより、偽装アカウントや詐欺リスクが増幅し、利用者保護が損なわれたと判断された。
さらに、広告ライブラリの不透明性も深刻な違反とされた。
広告内容・テーマ・広告主情報が欠落し、検索性も低いことから、研究者や市民社会が情報操作や偽広告を検証する環境が整っていないと、欧州委員会は指摘している。
加えて、研究者が公共データにアクセスするための仕組みは「不当に制限的」とされ、スクレイピング禁止などが調査を阻害していると明記された。
制裁に続き、EUはXに対して期限付きの是正措置提出を義務付けた。
青バッジ問題について60営業日、広告透明性とデータアクセス問題について90営業日以内に改善計画を示す必要がある。
※欺瞞的デザイン(ダークパターン):利用者の誤認や不利益を誘発するUI/UX設計手法。DSAでは禁止対象。
透明性強化へ圧力高まる一方で負荷も増大
今回の決定は、EUが大規模プラットフォームに対して透明性と説明責任を強く求める姿勢を示すものだ。
特に、認証バッジの誤認は情報の信頼性に直接関わるため、他社サービスにも改善を迫る圧力として作用する可能性がある。
広告ライブラリの透明化についても、偽情報対策や選挙干渉防止の観点から、国際的に波及することが予想される。
一方で、プラットフォーム側の負荷は大きくなるだろう。
詳細な広告情報の公開や研究者へのデータ提供は、開発コストやプライバシー管理の複雑化を招く恐れがある。
企業にとっては、透明性向上と事業効率の両立という新たな課題が浮上すると言える。
EUが今後も非遵守企業に対して制裁を積極化させれば、規制基準としてDSAがグローバルに参照される可能性もある。
Xが改善措置提出に遅れたり不履行が続けば、追加制裁が課されるリスクも残る。プラットフォーム運営と規制の関係は、今後数年で大きく再構築される局面に入ったと考えられる。
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