朝日新聞社、整文AI技術の特許取得 音声データから読みやすい文章を生成

2025年12月8日、朝日新聞社(日本)は音声データから読みやすい文章を自動生成する「整文処理」技術で特許(第7749098号)を取得したと発表した。同社の制作支援ツール「ALOFA」に実装され、音声起点の制作工程を効率化する仕組みとして提供されている。
音声処理と整文を統合した新アーキテクチャを特許化
今回の特許は、音声認識、話者分離、文分割、整文処理(※)までを一体で実行するアーキテクチャに関するものだ。会議やインタビューの音声は複数話者が混在し、逐語的な書き起こしでは読みにくく、編集者の負担が大きいという課題が長らく指摘されてきた。朝日新聞社は、この「前段階処理」と「整文」を統合し、音声から読みやすい文章へと変換できる技術を確立した。
整文処理では、言いよどみや冗長表現の除去、文の誤りの修正、表記ゆれの統一などを言語モデルが自動で実行する。従来は別々に行われていた工程を接続し、書き起こし文の忠実性と可読性を両立させる点が特徴だと言える。この統合型の仕組みによって、テキスト品質を底上げしつつ編集作業も短縮できる。
本技術はすでに、同社のコンテンツ制作支援ツール「ALOFA」に搭載されている。特に「AIリフレーズ」機能では、書き起こし後の初期整文作業を自動化することで、ユーザーが推敲や構成に素早く取りかかれるようになった。
※整文処理(※):音声起こしなどで得られたテキストから冗長表現や言いよどみを除き、文の区切りや表記を整えて読みやすくする技術のこと。
整文AIが拓く制作効率と表現の質 依存リスクと将来展望を読む
整文AIの高度化は、制作現場のワークフローを大きく変える可能性がある。
これまで手作業で行われてきた整文工程が自動化されれば、編集者が分析や構成といった上流工程に時間を振り向けられるようになり、結果として制作全体の効率向上につながるとの見方もある。
一方で、AIが整えた文体に依拠しすぎると、書き手の判断力や文章の個性が相対的に弱まる懸念が指摘されている。
どの工程をAIに委ね、どこから人の介在を確保するかという線引きは、今後の運用方針を左右するポイントになりそうだ。
また、整文技術の成熟は音声データ活用の広がりにもつながる。音声書き起こしの品質が安定すれば、会議記録の分析、顧客応対の振り返り、教育現場でのフィードバックなど、企業や行政の幅広い場面での導入が進むと考えられる。
さらに、生成AIによる動画・音声コンテンツの増加を背景に、音声起点の制作フローが一般化していくとの指摘もある。
整文AIがハブとなり、要約やタグ付け、台本生成など周辺工程の自動化が連動して進む展開も想定される。
朝日新聞社は、精度向上やユーザー体験の強化を重点領域に掲げている。音声データが情報発信で存在感を増すなか、整文技術の進化がメディア制作の競争力に影響を与える場面は今後さらに広がるとの見方が出ている。
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