NYタイムズがPerplexity AIを提訴 AI学習の境界線が問われる局面に

2025年12月5日、米紙ニューヨーク・タイムズはAIスタートアップのPerplexity AIを提訴した。同社記事の無断複製や商標侵害を主張し、損害賠償と差し止めを求めている。
NYTが無断複製と商標侵害で提訴 AI企業のデータ利用に警鐘
ニューヨーク・タイムズは、Perplexity AIが自社記事を無断コピーし、配布・表示していたとして提訴した。
同紙の広報担当者は「倫理的かつ責任あるAI開発は支持するが、当社コンテンツの無許可利用には断固反対する」とコメントした。声明からは、AI活用の意義は理解しつつも、著作権保護とブランド価値維持の優先度は変わらない姿勢が読み取れる。
Perplexity AIは、急速な事業拡大の裏側で複数の出版社から批判を受けている。10月にはRedditが同社を提訴し、ダウ・ジョーンズやニューヨーク・ポストも法的対応を進めている。
AI学習の公平性と責任が焦点に 透明性確保が産業構造を左右する
今回の提訴は、AI企業にとってデータ取得のあり方を再考する契機となる可能性がある。
Webコンテンツのスクレイピングは一般的な手法だが、有料記事やブランド価値の高い媒体を無断で利用した場合、著作権侵害にとどまらず、商標や信頼性に影響を及ぼすリスクが指摘されている。
さらに、AI特有のハルシネーションは出典の誤認につながりやすく、メディア側が警戒を強める要因になっているとみられる。
一方で、訴訟の長期化を背景に、メディアとAI企業の間で新たな契約モデルが模索される可能性もある。
実際、近年はニュース通信社がAI企業とデータ提供で提携する事例が増えており、適切なライセンスが整えばメディア企業にとって新たな収益源となりうる。
AI企業側にとっても、透明性の高いデータ利用は社会的信頼を高め、結果的にモデル品質の向上に寄与する可能性がある。
ただし、厳格な利用規制が導入されると、AIモデルの開発コストや時間が増加し、技術進化のスピードに影響するとの懸念もある。
データアクセスの範囲が制限されれば、回答の網羅性や多様性が低下するおそれも否定できない。激化する産業競争の中で、規制とイノベーションの均衡をどう設計するかは今後の重要な論点となる。
今回の訴訟は、AI時代の情報利用における「ルール形成の空白」を浮き彫りにした。
透明性、正確性、ブランド保護をいかに両立させるかは、AI企業だけでなく、メディア、ユーザー、規制当局を巻き込む長期的な課題となるだろう。
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