ロゼッタ、新ビジョン「人手修正不要の翻訳AI」を発表 産業翻訳自動化へ新段階

2025年12月4日、メタリアル・グループのロゼッタ(東京・千代田)は、新ビジョン「人手の修正が不要な翻訳AIを創る」を公表した。
産業翻訳AIで研究開発を進めてきたロゼッタが、生成AIの進展を踏まえて専門文書の完全自動化を目指す姿勢を示した形だ。
ロゼッタ、翻訳AIの完全自動化へ 人手修正ゼロを目標に新ビジョン
ロゼッタは過去20年にわたり、AI翻訳技術の実用化に取り組んできた実績がある企業だ。
2006年にはインターネットデータを活用した統計翻訳モデルを投入し、2017年にはニューラルネットワークを基盤とした翻訳AI「T-4OO」を商用化した。
ITR 「ITR Market View:対話型 AI・機械学習プラットフォーム市場 2024」によると、2024年には産業翻訳市場で国内No.1シェアに到達したという。
この度、ロゼッタはこれらの挑戦の延長線上に、「人手の修正が不要な翻訳AI」という新たなビジョンを掲げた。
翻訳結果を人間が一切修正せずに利用できる水準をゴールに据え、専門文書翻訳における工程の抜本的な省力化を狙う。
今回のビジョンが焦点を当てるのは、翻訳作業の中で「客観的に誤りと判断できる部分」の完全自動化である。
文法・固有名詞・専門用語・数値の整合性、業界ガイドラインや社内用語の反映など、正解が一意に定まる領域での誤りをゼロにすることを目指す。
従来は人手によるチェックが不可欠だった領域をAIに置き換えることで、翻訳フロー全体の効率化を進める姿勢だ。
まず注力する領域として、英日・日英における「IT通信業のマニュアル」と「製造業の取扱説明書」を挙げている。
五石順一代表は「早ければ来年、遅くとも 3 年以内に実現できる」と述べ、生成AIとの組み合わせによりビジョンの実現を強調した。
自動化で広がる効率化と競争力 残るリスクと展望
「人手修正ゼロ」が実現すれば、企業の翻訳業務が大きく変わることが期待できる。
工数の削減によるコスト改善、海外展開のスピード向上、24時間運用の自動翻訳基盤構築など、企業のグローバル戦略に直結するメリットが期待される。
特に製造・IT分野では、多言語マニュアル更新の頻度が高いため、負担軽減効果は大きいだろう。
一方、リスクも存在する。ニュアンスやスタイルなど「主観的な修正」をどこまで許容するかは、依然として人間側の判断が必要になる領域である。
また、完全自動化に伴う誤訳責任の所在、品質管理プロセスの再設計など、実務面の課題も浮上するかもしれない。医薬・法務・金融など高い正確性が必須の分野では、最終確認としての人間の関与を残す企業も多いとみられる。
とは言え、ロゼッタの新ビジョンは、単なる技術目標ではなく、グローバル業務のプロセスを変える可能性を持つ。
専門翻訳の自動化競争が激化するなか、同社がどこまで先行できるかが今後の焦点となるだろう。
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