SalesforceとAWSが共同基盤を強化 企業AI導入を迅速化する「Agentforce 360 for AWS」

2025年12月3日、米Salesforceと米Amazon Web Services(AWS)は、企業向けAI活用を加速する新基盤「Agentforce 360 for AWS」を共同発表した。
AWS Marketplaceで独占提供され、信頼性と統制を重視したAI導入環境を整える点が特徴となる。
信頼性と導入速度を両立するAI基盤をAWS上で提供
SalesforceとAWSは、企業のAI活用における信頼性とコスト最適化を強化するため、「Agentforce 360 for AWS」を共同開発した。
新サービスはAWSのグローバル基盤上で動作し、Amazon Bedrockを通じてClaudeやNovaシリーズなど多様な基盤モデルへアクセスできる構成となる。
Agentforce 360は2026年初頭からAWS Marketplaceで独占提供される予定で、企業は既存のAWS契約枠を活用しながら、購買・課金・価格交渉を一元化できる。
これにより、AI導入コストの可視化が進むほか、調達プロセスの簡素化が期待される。
Agentforce 360は、エージェントの思考過程を可視化する「Atlas Reasoning Engine」を搭載し、高度な監査要求に対応する点が強みだ。
特に金融・医療など規制の厳しい領域では、行動ログが自動生成される仕組みが重視される。Amazon Bedrock上で動作するClaudeモデルを推論エンジンとして利用でき、説明可能性と統制を両立した形でAIエージェントを運用できる。
また、顧客データをもとに適切なプロンプトを生成する「Prompt Builder」が組み込まれており、生成AIの精度を高める役割を果たす。
SalesforceのTrust Boundary内でエージェント処理が完結する設計で、外部モデル提供者による学習利用が発生しない点も企業導入の障壁を下げる要因となる。
AI導入の標準化進む可能性 一方で統制コストの増大も課題
「Agentforce 360 for AWS」の普及は、企業AI導入の標準化を後押しする可能性がある。AWS上の主要モデルを選択しながら、エージェントの思考・実行の全過程が統制下に置かれるため、部門横断のAI利用ルールや運用基盤を共通化しやすくなるだろう。
調達コストの一元化も、全社でのAI活用戦略を描く上で有効に働くと考えられる。
一方、リスクとして考えられるのは、統制の高度化が運用コスト増加につながるという点だろう。透明性や監査性を担保するためのログ管理、ガードレール設定、データ境界の維持には継続的な運用負荷が伴う。
また、SalesforceおよびAWSのエコシステムに依存する構造が強まるため、ベンダーロックインへの懸念は無視できない。
すでにCrowdStrikeがSalesforce Trust Boundary内でBedrockを活用し、セキュアなエージェント運用を開始している事例もあり、同様のユースケースは今後も拡大すると見られる。
企業のAI活用が一段と複雑化するなか、両社の協業がどこまで標準基盤として浸透するか、引き続き注目したい。
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