アスクル、Web注文を一部再開 ランサム被害後の復旧進む

2025年12月2日、アスクル株式会社はランサムウェアによるシステム障害の影響を受け、一部商品のWeb注文受付を同月3日より再開すると発表した。今回の対応は専門家と連携し、安全性の確認を経た試験的な運用である。
アスクル、Webサイトで一部商品の注文受付を再開
注文再開の対象となるのは、自社配送商品約1,100アイテムとメーカー直送商品約1,450万アイテム超で、順次拡大する見込みである。
再開にあたっては、倉庫管理システムを使用せず、手運用による出荷スキームを採用しており、障害リスクの回避を優先した形となる。
会員登録や注文履歴の閲覧は可能だが、納品書同梱やお届け日・時間帯指定などのサービスは制限されている。
また、定期配送や一部の医薬品受注、ポイント交換、各種申し込みサービスも停止中である。顧客はWeb上で購入可能な商品に絞って注文することになる。
今回の復旧作業は、ランサムウェア(※)感染による障害発生後の緊急対応として、専門家チームと社内担当者が連携して進めたものである。システム安全性を確認するためのテスト運用も同時に行われ、リスクを最小化した上で段階的なサービス再開が可能となった。
顧客への影響は限定的ながら、注文可能商品の範囲や配送条件の制約により、一部業務や購買計画に調整が必要となる。アスクルは全面復旧を目指し、各機能の再開時期や範囲について順次情報提供を行う方針だ。
※ランサムウェア:コンピュータやネットワークを感染させ、データを暗号化して身代金を要求する悪質なソフトウェア。
段階復旧の利点と課題 利便性回復と業務負荷増の両立
Web注文の段階的再開は、顧客利便性を一定程度回復する利点がある。
手運用による出荷により、システムリスクを抑えつつ注文を受け付けることで、顧客の業務継続性を確保できる点が大きい。また、直送商品の取り扱い拡大は、在庫の柔軟活用や納品多様化にも寄与すると考えられる。
一方で、通常システムを使わない手作業出荷は人的負荷が高く、誤配送や遅延のリスクも増す。特に医療・衛生品や大量消耗品など、納期の正確性が求められる分野では慎重な管理が不可欠である。
今後は、Web注文可能商品やサービス範囲を段階的に拡大することが予想される。
これにより、ユーザーは注文方法の選択肢が増え、利便性向上と安全性確保のバランスを取れる形となるだろう。
また、今回の復旧プロセスは、企業のサイバーリスク対策や事業継続計画(BCP)の重要性を改めて示す事例とも言える。システム障害への即応体制構築や、手運用による暫定対応のノウハウ蓄積は、今後のリスク管理に活かされそうだ。
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