東宝が会員IDを統合 映画・演劇・ECを横断する新基盤「TOHO-ONE」を2026年3月開始へ

2025年12月2日、東宝株式会社は新会員サービス「TOHO-ONE」を2026年3月に開始すると発表した。
映画・演劇・物販の利用履歴を一元化するID基盤で、既存制度を統合しながら新たなリワード体験を提供する。2032年までに会員1,000万人を目指す方針だ。
映画・演劇・物販の分断解消へ 東宝が「TOHO-ONE」を始動
東宝は映画館、演劇、EC、商業施設などに分散していた会員制度を統合し、新ID「TOHO-ONE」を2026年3月に立ち上げることを、説明会「TOHO-ONE メディアラウンドテーブル」で発表した。
シネマイレージや東宝ナビザーブ、EC、日比谷シャンテの会員基盤を束ね、作品横断での利用履歴や購買情報をシームレスに統合する構想である。
説明会においてCGOの大田圭二氏は、帝国劇場の一時休館にもかかわらず、2025年は『鬼滅の刃 無限城編 第一章』や映画『国宝』のヒットに支えられて過去最高益を記録したことに言及。
年明け2026年から2028年は「次なるフェーズへとドライブする期間」とし、グループの成長フェーズに合わせて顧客接点を再設計する必要があった旨を説明した。
東宝は、IPごとに映画・演劇・アニメなど複数の体験が広がる一方、IDが分かれていたため顧客コミュニケーションが分断されていた点を課題と位置づけた。
IPの余韻を劇場外で楽しめる体験や、買い逃したグッズのオンライン購入など、複数サービスの横断利用を可能にするのが「TOHO-ONE」の狙いである。
プランは無料の「ライト」、年会費500円の「スタンダード」、年会費3000円の「プレミアム」の3種類を用意する。
特にプレミアムは特典体験(リワード)を強化し、会員制度全体の価値向上を目指す設計となる。
チケット不正転売を抑えるため、認証強化と1人1アカウントの運用も徹底される方針だ。
2032年の創業100周年までに1,000万人会員を目指す計画だ。
ID統合で広がる顧客体験 成長余地と課題が並存する
「TOHO-ONE」は、映画ファンと演劇ファンが相互に興味を広げやすい環境を作ると期待される。映画をきっかけに演劇公演へ誘導したり、観劇後に映画館やECに回遊する導線を生むことで、IPエンゲージメントが多面的に拡大する可能性がある。
劇場というリアル拠点を多く持つ東宝だからこそ、体験価値をデジタルで拡張しやすい点は大きな優位性になる。
一方で、会員制度の一本化によって、単一のメディアしか利用しない人にとって割高感が出ないよう、価格設定に応じた価値提供が求められそうだ。
利用データの統合やアプリ基盤の拡張に伴い、個人情報と購買行動の扱いについて透明性を保てるかも継続的な課題となるだろう。
IPの多角展開が加速する中で、体験を束ねるID基盤を構築できれば、ファン経済圏を拡張する起点になりうる。
今後はポイント還元や限定イベントなど、リワード体系の設計が顧客定着の鍵を握ると言える。東宝がどこまでデジタルとリアルの両面でサービス価値を磨けるかが、長期的な競争力を左右しそうだ。
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