野村HDらがVC投資をデジタル証券化 特定投資家の参入を広げる国内初の仕組み

野村ホールディングスなど4社は、日本国内で初となるVCファンド投資向けセキュリティトークンの発行手続き完了を公表した。
特定投資家向け銘柄制度「J-Ships」を活用した、VC投資参入を後押しする仕組みに注目したい。
国内初のVC投資型セキュリティトークンが正式組成
2025年12月2日、野村ホールディングス、野村アセットマネジメント、野村信託銀行、ブーストリーの4社は、VCファンドを投資対象とするセキュリティトークン「<ノムラ・プライベート・シリーズ・B Dash Fund 5・トークン化VCファンド202510(特定投資家専用)>」の発行手続き完了を発表した。
VCファンドを対象としたデジタル証券の発行は国内初であり、新たな資金調達手段として大きな節目と言える。
今回の発行では、特定投資家向け銘柄制度「J-Ships」が初めてセキュリティトークンに適用された。
同制度は、証券会社を経由して非上場株式や投資信託をプロ投資家である特定投資家に流通させる枠組みであり、従来は機関投資家中心だったVCファンド投資の門戸を広げるものになる。
VC投資は一般に投資事業有限責任組合(LPS)(※)を用いるが、契約や管理が複雑で個人投資家が参加しにくい構造だった。
これに対し、今回のトークン化スキームでは手続きの効率化が進み、特定投資家による参入の壁が取り払われ、契約・管理等がより容易に行えるようになった。
受益権の記録・移転には、ブーストリーが主導するブロックチェーン基盤「ibet for Fin」が採用された。
対象となるファンドは、ビーダッシュベンチャーズが組成した「B Dash Fund 5号投資事業有限責任組合」で、総額200億円のうち80億円を今回のセキュリティトークンによって調達する形で組成が完了した。
※投資事業有限責任組合(LPS):ベンチャー投資などに用いられる組合スキーム。契約管理が複雑で個人投資家の参入障壁が高いとされる。
個人のVC投資が広がる可能性とリスク 資産形成の新選択肢に
今回の取り組みは、これまでプロ中心だったVCファンド領域に個人の投資余地を生む点で重要だと言える。
特定投資家に限られるとはいえ、非上場企業への投資機会が拡大することは、資産形成の新たな選択肢として機能する可能性がある。特に、スタートアップ投資は高リスク・高リターンの性質を持つため、従来型の金融商品では得られない成長企業へのアクセスを提供するだろう。
一方で、VCファンドは流動性が低く、元本保証も存在しない。そのため、J-Ships制度を通じて参入対象が拡大しても、投資経験やリスク許容度の見極めが重要になると思われる。
加えて、トークン化による管理効率化が進んだとしても、投資先企業の成長性や市場環境によってリターンが大きく変動する点が変わりないことには注意が必要だろう。
とはいえ、ブロックチェーン上で受益権を管理する仕組みは、将来的に未上場資産の流動性向上につながる可能性がある。国内のスタートアップ投資を巡る資金循環が改善すれば、エコシステム全体の成長を後押しする効果も見込まれる。
今回の案件は、トークン化と投資制度改革が交わる事例として、今後のデジタル証券市場の発展に関して重要なモデルケースになるだろう。
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