中国人民銀行がステーブルコイン規制を強化 違法行為の取り締まり方針が市場に波及

中国人民銀行(PBOC)が暗号資産市場の過熱を警戒し、ステーブルコインに関わる違法行為を厳しく取り締まる方針を示した。
発表は中国国内で行われ、声明内容が香港市場の暗号資産関連銘柄にも影響を与えた。
中国人民銀行、ステーブルコイン悪用を警戒し違法行為を摘発へ
2025年11月29日、中国人民銀行は、暗号資産分野に対する規制姿勢を改めて強め、ステーブルコインに関わる違法行為の取り締まりを強化すると発表した。
前日の28日に開催された暗号資産規制の調整会合を踏まえた声明で、暗号資産市場において投機が再度増加し、新たなリスクが生じていると指摘した。
同銀行は「暗号資産は法定通貨と同等の法的地位を持たず、市場において法定通貨として使用できない」と明確化し、関連事業は違法な金融活動に該当する可能性があるとした。
特に、ステーブルコインの発行・交換に伴う顧客確認(KYC ※1)やマネーロンダリング対策(AML ※2)の不備を重大な懸念として挙げている。
さらに、ステーブルコインがマネーロンダリング、詐欺、無許可の越境送金といった行為に悪用されるリスクを強調し、国内の金融安定を守るために取り締まりを徹底する姿勢を示した。
PBOCは今年10月にも、パン・ゴンシェン総裁が国内の暗号資産投機を引き続き排除し、海外ステーブルコインの動向を動的に評価すると述べていた。
中国では2021年以降、暗号資産取引やビットコインのマイニングが禁止されているものの、一部省では安価な電力とデータセンターを背景にマイニングが静かに復活しているとされる。
今回の声明は、こうした動きを再び抑制する狙いもあるとみられる。
また、香港上場の暗号資産関連企業は反応し、12月1日にはユンフェン・フィナンシャル・グループが10%超下落し、Bright Smart Securities and Commodities Groupが約7%、OSLグループが5%超の下落となった。
※1 KYC:顧客確認手続き。違法行為の防止を目的に金融機関などが利用者の身元を確認する仕組み。
※2 AML:マネーロンダリング対策。犯罪収益の洗浄を防ぐための規制体系。
規制強化の波紋 市場安定か萎縮か、二つの影響が交錯
中国人民銀行の規制強化方針は、国内の金融安定に一定の効果をもたらす可能性がある。
一貫した締め付けにより、無許可の資金移動や詐欺行為の抑止が期待され、リスクの高い投機を抑える効果も見込まれる。
一方で、過度な規制は市場参加者の萎縮を招き、技術革新やデジタル資産事業の発展を阻害する懸念もある。
特にステーブルコイン領域では、海外発行体が主導する技術競争が進むなか、中国本土の厳格な規制が境界面での競争力を低下させるリスクがある。
香港が規制枠組みを整備しつつ発行体ライセンスの付与を進めていない現状では、中国本土と香港の規制差が市場構造に影響を与える可能性も否定できない。
今回の声明によって香港市場の関連銘柄が急落したことは、投資家心理がいかに敏感であるかを示す動きであり、今後も政策発表が市場ボラティリティの引き金となる局面が続くと考えられる。
規制強化が中長期的に安定をもたらす一方で、短期的には資金流動性や企業活動に影響を及ぼすことが予想される。
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