イオレ、九州で分散型AIデータセンター本格化 入来工業団地用地交渉へ

2025年12月1日、イオレはデジタルダイナミック社が鹿児島県薩摩川内市入来工業団地の用地取得交渉者候補に選定されたと発表した。両社は共同で九州リージョンにおける分散型AIデータセンターの構築を進める計画である。
薩摩川内に次世代GPU対応データセンター建設を加速
イオレとデジタルダイナミック社は、薩摩川内市入来工業団地内の4街区、計約3万5,000㎡の用地取得交渉に進むこととなった。この用地は九州リージョンにおける分散型AIデータセンター計画の重要拠点となる。
両社は2025年6月に戦略的提携を締結後、GPUサーバーを中心とした分散型AIインフラ整備を推進してきた。10月には、デジタルダイナミックが総務省の地方分散型デジタルインフラ強靭化事業の間接補助事業者に採択され、九州拠点の設立を公表していた。
本プロジェクトの特徴は、次世代ラックスケールデザイン「GB300 NVL72」規格に対応する高密度GPU運用である。液冷システムを全面的に採用することで、高い演算能力を持つAI半導体を安定かつ低消費電力で運用できる設計だ。
地方分散による強靭化も狙いの一つで、首都圏集中のリスクを回避しつつ九州エリアにAI計算資源の核心拠点を形成する。用地取得に成功すれば、最大受電容量19MW規模のデータセンター建設が進む見込みである。
イオレはプロジェクトを通じ、デジタルダイナミック社との協業でAI UI事業におけるユースケース開発やデータセンター活用モデルの社会実装を加速させる方針だ。
さらに、WOODMANやトゥモロー・ネットなどの協働企業と連携し、地域産業のデジタル化や環境負荷の軽減、雇用創出にも取り組む。
九州拠点本格化の利点と課題 地域経済と技術革新への影響
九州リージョンでの分散型AIデータセンター本格化は、地域に高度な計算資源を供給するだけでなく、地元経済の活性化にも直結する可能性がある。GPUを高密度で運用できる最先端設備は、国内外のAI開発企業にとって魅力的な拠点となるだろう。
一方で、高度設備の導入は初期投資や運用コストが大きく、収益化までの期間は不透明だ。
液冷システムや大容量電力の安定供給確保には技術的なハードルも存在する。特に、周辺インフラや人材確保が計画進行の鍵となる可能性がある。
環境面では、高効率な冷却や再生可能エネルギー活用により省エネを図る計画だが、規模拡大に伴う消費電力増加は課題として残りそうだ。地域と連携した持続可能な運用モデルの構築が求められるだろう。
将来的には、九州を皮切りに全国分散型ネットワークの拡張やAI生成サービスの多様化につながる可能性が高い。
計算資源の地域分散は、国内AI競争力の底上げにも寄与すると考えられる。
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