ビットフライヤーが法人の税負担を軽減へ 期末時価評価課税を回避する新サービス開始

国内暗号資産取引所ビットフライヤーが、法人が保有する暗号資産を期末時価評価課税の対象から外せる「アセットロックサービス」を発表した。一定期間の移転制限を設けることで、法人税上の適用除外要件を満たす仕組みとなる。
暗号資産の移転制限で期末評価課税を回避できる新制度
2025年11月27日、ビットフライヤーは「アセットロックサービス」を導入することを発表した。
アセットロックサービスは、法人が保有するビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、エックスアールピー(XRP)のいずれかについて、売却や貸出といった一切の移転を一定期間制限する仕組みである。この制限が、期末時価評価課税(※)の適用除外要件に該当するという。
対象となるのは、日本円換算で1銘柄あたり1,000万円以上の暗号資産で、ロック期間は1年以上に設定される。申込手数料は無料で、JVCEA(日本暗号資産取引業協会)の規則・ガイドラインに準拠した形で運用される点も特徴だ。
同サービスでは、イーサリアムのステーキングサービスと併用できる仕組みがある。
ロック期間中であってもステーキング報酬の受け取りは可能で、10月の実績では年利約1.73%が付与された。
ただし、ステーキングで得た報酬が課税対象外になるかはケースにより異なり、必ずしも評価課税の除外に含まれない場合があると説明されている。
※期末時価評価課税:法人が保有する暗号資産を期末時点の時価で評価し、その評価益に課税する仕組み。価格変動が大きい資産では税額が予測しにくい点が課題とされる。
税制環境の改善が法人の暗号資産活用を後押しする可能性
ビットフライヤーのアセットロックサービスは、日本の法人が抱えてきた期末時価評価課税という構造的な負担を和らげる仕組みとして一定の意義がある。特に、決算期における価格変動リスクを固定化できる点は、財務計画を立てやすくする効果が期待される。
これまで企業は、期末直前の価格急騰で「未実現であるにもかかわらず課税だけが先行する」事態への懸念を抱えてきた。移転制限によって適用除外要件を満たす形は、その不確実性を抑える作用を持つと考えられる。
しかし、1年以上のロックを課す仕組みは、流動性リスクを残す。
相場急落時に売却できない可能性があることは、暗号資産特有の高ボラティリティを踏まえると無視できない弱点となるだろう。ステーキング報酬がこのリスクをどこまで補填できるかは市場環境によって左右されるため、万能な仕組みとは言いにくい。
また、ステーキング報酬の課税可否がケースバイケースとされている点も、法人にとっては追加的な税務判断を求められる領域であり、制度利用のハードルとして残る側面がある。
今後は、会計基準の動向や税制改正の行方によって企業の採用意欲が左右されると考えられる。特に、Web3関連事業を展開する企業や資産保有額の大きい法人にとって、期末評価による税負担の回避は、財務計画の柔軟性を高める効果がありそうだ。
ビットフライヤーの取り組みは、国内での暗号資産活用の裾野を広げる契機となるかもしれない。
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