リーガルテックが「知財AI」外部連携レイヤー提供開始 技術共有を安全化

東京都のリーガルテック株式会社は、研究開発や知財部門で求められる技術資料の外部共有を安全に行うため、同社の三層型AIプラットフォームに「外部連携AIレイヤー」を新設したと発表した。
国内企業・大学・スタートアップ間の技術協業を加速させる基盤となる。
企業間の技術資料共有を統制する新AIレイヤーを正式提供
2025年11月27日、リーガルテック株式会社は、三層型AIプラットフォームに「外部連携AIレイヤー」を追加し、研究ノートや技術メモ、特許資料といった技術文書の外部共有を安全に管理できる仕組みを整えたと発表した。
同社はこれまで、MyTokkyo.Ai、IPGenius、リーガルテックVDR(※)を通じて研究・知財領域のデータ管理を支援してきたが、今回の拡張により「創出・整理・共有」を一体で扱う基盤が完成した。
発表によると、共同研究や技術提携の増加に対して、技術資料の流通は依然としてZIP暗号や共有リンクなどの手法に依存しており、ダウンロード後の追跡不能やバージョン混乱、情報漏洩リスクが課題となっていた。
今回の外部連携AIレイヤーでは、AIによる個人情報や秘匿情報のマスキング、共有後の閲覧権限設定、行動ログの自動収集が標準機能として提供される。
具体的には、MyTokkyo.AiとIPGeniusが技術文書の内容を解析し、外部共有に適した形へ整形するほか、リーガルテックVDRにより「閲覧のみ」や「ダウンロード不可」といった細かなアクセス制御が行える。
さらに、閲覧・更新履歴はAIが自動で記録し、特許共同出願や技術評価における監査の基盤として利用可能となる。
本プラットフォームは、大企業とスタートアップの技術評価、産学連携、サプライヤーとの仕様共有、海外拠点との研究資料交換など、多様な協業シーンへの適用を想定している。
※VDR(Virtual Data Room):機密文書を安全に共有するための仮想データルーム。M&Aや特許手続きで利用される。
外部連携の高度化で協業効率が向上する一方、運用負荷の課題も
今回の外部連携AIレイヤーにより、技術資料の共有プロセスは大幅に効率化するとみられる。
共有前のマスキング、共有後の統制、行動ログの自動収集が標準化されることで、協業立ち上げのスピードは向上し、研究開発の成果を適切に外部活用しやすくなる可能性がある。
特に、技術評価や特許出願の場面では、資料管理の明確化が進み、手戻りの低減につながるだろう。
一方で、アクセス権限の詳細設定やログ管理を企業が継続して運用する負荷は依然として残る。
統制レベルを強めるほど、管理プロセスが複雑化し、運用体制の整備が必要となる点はデメリットといえる。
また、AIによるマスキングやログ収集の精度維持には継続的な検証が求められ、誤検知や除外漏れが発生した際の対応も重要になる。
それでも、国内外で技術提携が拡大する中、外部共有を前提とした知財管理の需要は高まっている。
今回のレイヤー追加は、企業をまたぐ技術データ流通の標準化に向けた一歩と位置付けられ、無形資産の活用範囲が広がる可能性もある。
協業効率と安全性を両立できる基盤として、今後の運用改善と普及が注目される。
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