国交省がAI加工写真のSNS投稿削除 公的機関の広報ガバナンス問われる

2025年11月28日、国土交通省・薗原ダム管理支所(群馬県)がSNSに投稿したAI加工写真を削除した。同支所は内規違反を理由に対応したと投稿した。
AI加工写真の未告知投稿が問題化し、内規抵触で削除に至る
国交省の薗原ダム管理支所は27日、Xの公式アカウントで紅葉した山々と虹が写った写真を「薗原ダムに虹がかかりました」と題して投稿した。鮮やかな色合いが目を引く内容で、「秋色の山々+虹=最高の景色」と添えた文言も相まって、多くの閲覧を集めた。
しかし、写真内に写る「薗原ダム」の看板文字が不自然にゆがんでいることから、「AI加工ではないか」との指摘が複数寄せられた。投稿には加工の明示がなく、「公的アカウントとして不適切」「誤認を与える」といった批判も見られた。同支所は28日、AIツールで虹の色調整を行った際に想定外の部分まで改変されていたと説明したが、元画像は提示せず、透明性に欠けるとの指摘が残った。
状況を受け、統括する利根川ダム統合管理事務所が投稿内容を精査した結果、同事務所の「誤解を与えない情報発信」を求める運用ポリシーに抵触すると判断。28日夕に二つの投稿を削除した。写真は26日に職員が撮影したもので、業務上使用が認められたAIツールによる加工が施されていた。当初から看板文字のゆがみは把握していたが「PRになる」と判断し公開したという。
AI活用は効率化の一方で、透明性を欠けば信頼低下を招く可能性
今回の事案は、公的機関がAIを業務に組み込む際、透明性や統制が課題になり得ることを改めて示唆したとも言える。AIによる色調補正は作業効率を高め、広報素材の質を一定水準に整えられる可能性がある。
一方で、意図しない改変が紛れ込むリスクは避けにくく、加工の告知がなければ「演出ではないか」という疑念を招くおそれがある。とくに公的アカウントでは、民間よりも発信内容への信頼性が重視されやすい。
また、生成AIの普及によって画像や動画の真実性が揺らぎやすい時代になっており、公的機関は発信内容の信頼性を確保するため、どこまで加工を許容するか、どの段階で注釈を入れるべきかといった基準の明確化が求められつつある。
加工の告知ルールの整備や、職員が利用するAIツールのガイドライン策定が今後の検討ポイントになるだろう。
さらに、自治体や官庁がSNSを通じて地域の魅力を発信する機会が増えるなか、AI加工は表現力向上に寄与し得る。一方で、過度な演出は現地との認識ギャップを生み、観光や地域イメージに誤解を与える可能性も否定できない。適切な線引きが行われなければ、広報全体の信頼性が揺らぐ懸念もある。
今回の事案は、公的セクターにおけるAI活用のガバナンス体制について、改めて検討を促すきっかけになったといえそうだ。制度の明確化や透明性の向上が、将来的な混乱防止につながる可能性がある。
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