日本新聞協会、政府AI基本計画に意見公表 権利保護と透明性の不足を指摘

日本新聞協会は、政府が示した「人工知能基本計画骨子」と「AI適正性指針骨子」に対する意見書を公開した。
報道コンテンツの無断利用や学習データの不透明性に懸念を示し、知的財産保護の強化と権利処理の明確化を求めた内容となっている。
新聞協会、AI基本計画の権利保護・透明性不足を指摘
2025年11月27日、日本新聞協会は、政府が公表した「人工知能基本計画骨子」および「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針骨子」に対する意見を明らかにした。
意見書では、報道コンテンツの無断学習やゼロクリックサーチ(※)の拡大による収益循環の悪化を課題として挙げている。
協会は、AI事業者に対し許諾取得を繰り返し求めてきたが状況は改善しておらず、報道機関が得た収入が再投下されないことで機能の低下につながると指摘した。
また、今回の意見募集が1週間未満という短期間で実施された点についても遺憾の意を示した。
基本計画の第2章に関しては、AI活用や開発の推進に重点が置かれ、リスクや知的財産保護に関する記述が不十分であるとした。
さらに、政府がデータ基盤構築に取り組む場合、権利者への対価支払いが不可欠と強調し、AI調達時の判断基準に権利処理の有無を含めるべきだと述べている。
加えて、AI社会に向けた変革の項目では、コンテンツホルダーへの対価還元に関する透明性確保の重要性を挙げた。
技術的措置による利用拒否が無視される事例があると指摘し、実効性ある取り組みの必要性を示した。
指針骨子に対しては、「公正競争」や「透明性」の項目に触れつつ、説明可能性の記述における「技術的に可能な範囲」という表現を限定的と捉え、削除すべきだとした。
学習データの透明性確保が十分でない現状を踏まえ、説明の範囲を広げる必要性も指摘している。
※ゼロクリックサーチ:検索結果ページ上で情報が完結し、利用者が元サイトへ移動しない検索行動。
権利処理の制度化と透明性向上がAI活用の信頼性を左右
新聞協会が提示した論点は、報道機関の保護にとどまらず、国内AIエコシステムの持続性全体に影響する問題と言える。
なかでも学習データの透明性は、AI事業者と権利者の間で適切な関係を築く前提条件となる。
透明性が確保されなければ、自らのコンテンツがどのように利用されているか権利者が把握できず、対価還元の仕組みも成立しにくい構造が続く可能性がある。
また、計画骨子に含まれる「公正競争」の概念は、データ収集における不公正な手法の排除を示すもので、適切な運用が期待される。
他方で、「技術的に可能な範囲」という限定は開示範囲を狭める恐れがあり、AIモデルのブラックボックス化を助長しかねない。
さらに、データ収集ポリシーの開示だけでは権利者の透明性確保として不十分で、使用されたデータを特定できる仕組みの整備が求められるだろう。
対価還元の制度化が進まない現状では、AI事業者側の自主的取り組みに依存するだけでは実効性が担保されにくい。
一方で、権利処理の厳格化はAI開発の迅速さに一定の制約を生む可能性もあるが、長期的には社会的信頼の獲得につながり、持続的な技術成長の基盤になると考えられる。
開発と権利保護の調和が、国内のAI競争力を支える鍵となりそうだ。
一般社団法人日本新聞協会 「人工知能基本計画骨子」「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針骨子」に対する意見
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