豪州、暗号資産取引所とカストディに金融ライセンス義務化へ

2025年11月26日、豪州政府は暗号資産分野の投資家保護と産業育成を目的とした新法案「Corporations Amendment(Digital Assets Framework)Bill 2025」を議会に提出した。
取引所やカストディ事業者に対する規制強化が柱となる。
暗号資産プラットフォームにAFSL取得を義務化
豪州政府は、暗号資産取引所やカストディ事業者を対象に、オーストラリア金融サービスライセンス(AFSL※)の取得を義務付ける新法案を提出した。
対象はビットコインやステーブルコイン、現実資産のトークン化プラットフォームが含まれる。法案は第1読会を通過し、現在議会で審議中である。
法案では「デジタル資産プラットフォーム」と「トークン化カストディプラットフォーム」の二区分を制度化し、既存金融規制と同等の透明性・健全性・消費者保護義務を課す。
事業者は誠実かつ公正に業務を遂行し、虚偽表示や不公正契約は禁止される。また、顧客資産の保管方法や権利情報を明確化する義務も設けられる。
さらに、リスク管理やガバナンス体制の構築が求められ、トラブル時の紛争解決や補償制度も義務化される。
小規模・低リスクの事業者には例外規定が設けられ、1顧客あたり5,000豪ドル(約51万円)未満や通年取引量1,000万豪(約10.2億円)ドル未満はライセンス免除対象となる見込みだ。
豪州政府はこの法案を、消費者保護の強化と産業競争力向上を両立する成長戦略の中核と位置付けている。
財務省の調査では、トークン化やデジタル金融による年間240億豪ドル規模の経済効果が期待されるとしており、金融サービス大臣ダニエル・ムリノ氏は「暗号資産は経済成長の重要な機会」と強調している。
※オーストラリア金融サービスライセンス(AFSL):豪州で金融商品やサービスを提供する事業者に必要な国家認可。規制遵守と顧客保護が義務付けられる。
ライセンス義務化がもたらす経済効果と潜在リスク
今回のライセンス義務化により、消費者保護や取引透明性の向上を通じて、投資環境の信頼性を高められるだろう。特に、暗号資産市場での詐欺リスク低減やカストディ事業者の信頼確保に寄与する可能性が高い。
また、金融サービスとしての規制枠組みに組み込むことで、国内外投資家の参入意欲を刺激し、産業競争力の強化にもつながると考えられる。
一方で、ライセンス取得やガバナンス体制整備にはコストが伴うため、小規模事業者の参入障壁が高まるリスクもある。免除対象の設定はあるものの、初期段階のスタートアップには依然負担感が残ると見られる。
さらに、規制強化により事業者が手数料や運営コストを価格に転嫁する可能性があり、消費者側の負担増加も懸念される。これにより、一部の利用者が海外プラットフォームに流れる可能性も否定できない。
総じて、法案成立後は市場の透明性と信頼性向上による長期的な成長が見込まれるが、短期的には事業者コストや市場構造への影響が課題となるだろう。政府や業界が適切なバランスを保てるかが、今後の普及速度を左右すると言える。
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