中国IT大手がAI訓練を海外移転 米規制回避と半導体確保に動く

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が、中国の大手ハイテク企業がAIモデルの訓練を国外データセンターで進めていると報じた。米国による先端半導体輸出規制強化を背景に、エヌビディア製AI半導体の活用と技術開発継続を図る動きである。
輸出規制回避へ AI学習拠点が国内から海外へ移動
中国大手IT企業が、最新の大規模言語モデル(LLM)(※)の訓練作業を東南アジアに設置されたデータセンターへ移している。
2025年11月27日、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が関係者の話として報じた。
アリババやバイトダンスなどの大手テック企業は、東南アジアに設置されたデータセンターで最新の大規模言語モデルの訓練を進めている。これらのデータセンターは、米国や欧州系クラウドサービス事業者が所有・運営しており、中国企業はリース契約を通じて利用している。
米国が2025年4月にエヌビディア製AI半導体「H20」の対中輸出制限を導入して以降、このような海外拠点での訓練が増加しているためだ。
一方で、ディープシークは規制前に大量のエヌビディア製半導体を確保していた例外的企業であり、国内の自社施設でAIモデルの訓練を継続している。
※LLM(大規模言語モデル):大量のテキストデータを学習し、人間に近い自然な文章や対話を生成するAIモデル。
独自開発か依存継続か AI競争力確保が中国企業の分岐点に
中国企業によるAI訓練拠点の海外移転は、米国による半導体規制を回避し、開発速度を維持する手段として一定の有効性を持つと考えられる。
特に、東南アジアの外部データセンターを活用することで、最新GPUを用いた訓練を継続できる点は、競争環境が激化する中での大きな利点と言える。
また、制裁対象外の設備を使うことで短期的な開発遅延を防ぎ、AIモデルの市場投入スピードを確保できることもメリットだ。
しかし、海外設備依存が進めば、運用コストや契約リスク、さらには地政学的な環境変化に左右される不安定要素が増すかもしれない。
米国が今後クラウド経由での半導体提供やAI訓練そのものを規制対象に含める可能性もあるため、抜け道的戦略は永続性に乏しいと考えられる。
さらに、高性能半導体に依存する構造から脱却できなければ、自国開発力の欠如が長期的な国際競争力低下に繋がる懸念もある。
今後、中国企業は「海外依存による回避策」と「国内技術育成による自立化」の両面を追求する二重戦略を継続する可能性が高い。一定期間は実効性重視の場当たり的対応が続くものの、いずれは規制圧力の上昇により、戦略転換を迫られる局面が到来するだろう。
現状の動きは過渡期的現象とも捉えられ、5〜10年のスパンで産業構造が大きく変化する可能性もありそうだ。
関連記事:
米、エヌビディアAI半導体「B30A」中国への販売阻止 対中輸出規制強化

中国、公的資金データセンターで外国製AIチップを禁止 国産化推進で米半導体勢に逆風

メタがグーグルAI半導体導入を検討 エヌビディア依存からの脱却狙う動き拡大












