日本郵船が会計基盤を刷新 SAPクラウド導入でAI活用の土台を構築

日本郵船株式会社がAI活用による経営高度化を目的として、会計基幹システムをSAP S/4HANA Cloud Public Editionへ全面移行したと発表した。
本社および国内外約350社で標準化を進め、システムは2025年7月から安定稼働している。
日本郵船、SAPクラウドで350社の会計システムを統合
2025年11月27日、日本郵船は、会計基幹システムをSAP S/4HANA(※1) Cloud Public Editionへ移行し、社内システム基盤の全面刷新を実施したと発表した。
移行にはシグマクシスやSAPジャパンなどのパートナーが参画し、2025年7月から安定した運用が続いている。
今回の刷新では、本社と国内外の子会社を含む約350社で、分散していた会計システムを統一した。
会計・財務領域の主要5モジュールを導入し、業務プロセスの標準化が進んだことで、従来450件あったアドオンは約1割にまで圧縮された。
これにより、システムの維持管理が容易になり、運用効率が大幅に向上した。
さらに、日本初となる財務取引管理やインハウスバンキングといった高度な金融機能の標準化も実施した。
クラウド型ERPは定期アップデートにより常に最新機能を利用でき、導入後初のバージョンアップも2025年8月に円滑に完了している。
標準機能を重視したFit to Standard(※2)の徹底が、スムーズなアップデートを支えた。
シグマクシスは業務と標準機能のすり合わせを主導し、SAPジャパンは機能拡張ニーズへの対応を担った。
NYK Business Systemsは周辺システムの改修とデータ移行を担当し、伊藤忠テクノソリューションズは必要最小限の拡張開発を支援した。
※SAP S/4HANA:SAPが提供する基幹業務システムの最新版
※Fit to Standard:追加開発を抑え、標準機能に業務を合わせる設計手法
標準化基盤を整備しAI活用が進展 意思決定高速化が期待される
今回のシステム刷新により、日本郵船は余計なカスタマイズを避け、アップデートしやすい状態に整えたシステム基盤を確立した。
これにより、生成AIを活用した業務効率化が進む土台が整えられたといえる。
データの品質が高まることで、AIによる分析や判断支援の精度も向上する可能性がある。
一方で、業務標準化には現場の運用変更が伴うため、移行期間中の負荷増大や一部業務の見直しが求められるリスクも残る。
ただし、標準機能を中心とした運用に切り替えることで、長期的にはアップデート対応が容易になり、事業環境の変化に柔軟に対応できる点は大きな利点となるだろう。
さらに、財務や経営管理に関するデータが統合されることで、意思決定に必要な情報を迅速に把握しやすくなり得る。
今後は生成AIを組み合わせた業務自動化や高度分析の拡大が期待され、海運・物流業界におけるデータ活用の一つのモデルケースになる可能性もありそうだ。
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