暗号資産、金商法の監督下へ 不正流出対策と販売手法の規制強化へ

2025年11月26日、金融庁の金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」が、暗号資産を金融商品取引法(金商法)で規制する改正案の報告書案を公表した。
国内での投資家保護強化と不正流出防止策が焦点となる。
暗号資産を金商法に統合、包括的監督で投資家保護強化
金融庁の報告書案では、暗号資産を従来の資金決済法中心の規制から金商法下に移行させ、投資商品としての性格を踏まえた横断的な規制を適用する方針が示された。これにより、売買、勧誘、運用、助言、資産管理、市場監視までを一元管理する体制を目指す。
国内の暗号資産市場は、2025年9月時点で口座数が延べ1,300万口座、預託金残高は5兆円超に達しており、特に年収700万円未満の個人投資家が多く、一般層への浸透が顕著である。
一方で、月平均350件超の投資勧誘関連の苦情が金融庁に寄せられており、価格変動の大きさや情報不透明性が被害拡大の背景とされる。
報告書は、情報提供規制の強化や中央集権型暗号資産に対する発行者の開示義務、販売所取引への誘導の是正、最良執行義務の遵守などを具体的施策として挙げた。
また、無登録業者に対する差止命令や課徴金、刑事罰の適用も金商法により可能となり、従来より強力な監督手段が導入される見込みである。
さらに、暗号資産交換業者に対して不正流出に備えた準備金の積立義務化も検討されており、金融庁は改正案を2026年通常国会に提出する予定である。
規制強化の影響と投資家保護の実効性
金商法下での監督強化は、個人投資家の安全性向上に直結すると考えられる。
特に情報開示の充実や取引適正化は、詐欺的勧誘や不透明な価格形成のリスク低減につながる可能性が高い。交換業者の販売手法に対する監視が強化されれば、利益誘導による不公正取引の抑止にも寄与するだろう。
一方で、規制強化に伴う業務負担増や準備金積立義務の導入は、中小規模業者の経営に圧迫をもたらし、一部の事業者撤退や市場再編が進む可能性がある。これにより競争環境やサービス提供体制に影響が及ぶリスクも否定できない。
さらに、金商法による包括規制は暗号資産の市場全体を横断的に監督可能とする反面、技術進化や新規サービスへの柔軟な対応を難しくする側面もある。制度設計次第では、市場参加者の創意工夫を抑制しかねない。
今後は、投資家保護と市場活性化のバランスが焦点となるだろう。
金融庁が明確なガイドラインや監督方針を示すことで、透明性の高い取引環境が整備されれば、一般層への暗号資産利用拡大も支援できる可能性がある。
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