アリババのAIアシスタント「Qwen」が急拡大 公開1週間で1000万DL突破

2025年11月24日、中国アリババが公開したAIアシスタント「Qwen」アプリが、ベータ版の提供開始から1週間で1000万ダウンロードを達成したと発表した。
中国本土における消費者向けAI市場参入の本格化を告げる動きとして注目できる。
Qwenアプリが1000万DL 中国で生活密着型AIとして存在感
アリババは11月24日、AIアシスタント「Qwen」アプリが公開からわずか1週間で1000万件のダウンロードを記録したと発表した。
17日にベータ版がApp Store中国版で提供されて以降、急速にユーザーが増加している。
アプリは中国版「App Store」において「Qwen Chat」として展開されており、同社が掲げる消費者向けAI戦略の中心的位置づけになるとみられる。
アリババはリリースで、Qwenについて「アリババの消費者向けAI市場への参入にとって最も重要な一歩であり、その狙いは最先端の基盤AIモデルの能力を実生活に役立つアプリケーションやツールに転換することにある」と述べた。
アリババ曰く、アプリはディープリサーチ機能に強みを持ち、膨大なオンライン情報を統合して回答を生成することに長けているという。
ほか、AIがプログラムのコードを書くバイブコーディング、AIカメラ、スライド自動生成など多機能を備える。
アプリの根幹となるのは4月に公開された「Qwen3」モデルファミリーであり、最大規模の「Qwen3-235B-A22B」は混合専門家(MoE)方式を採用する。
アリババは同モデルがコーディングや数学領域で「OpenAI o1」や「DeepSeek-R1」を含む主要モデルと同等以上の性能を示すと説明しており、中国国内のAI競争における技術的優位を強調した形だ。
アリババは今後、Qwenを生活サービスのハブとして拡張する方針を示している。
フードデリバリー、ヘルスケア支援、旅行予約、Eコマースなど、日常生活に密接したサービスをアプリ上で統合し、「生活に不可欠なAI」への進化を図る。
なお、国境なき記者団の調査によると、Qwenを含む中国の主要なAIモデルは、北京の公式見解に厳密に沿った回答をするという。
生活サービス統合で拡大狙うQwen 利便性向上と情報統制の課題も
アリババのAIアシスタント「Qwen」が公開1週間で1000万ダウンロードに到達した事実は、中国の消費者向けAI市場が急速に拡大していることを象徴する出来事だと言える。
Qwenはアリババの巨大な生活サービス網と自然に接続しうる点が大きな強みだ。
一方で、中国国内のAIが政府公式見解に厳密に沿った応答を返すという外部調査の指摘は懸念される。
生活に密着するAIほど、情報の非対称性や利用者の依存度は高まるだろう。
特に、そこに政治的バイアスが入り込む場合、ユーザーの認知形成が特定方向に誘導されるリスクは否定しがたい。
それでも、急速なダウンロード数の伸びは、中国における生活密着型AIのニーズの大きさを示している。
Qwenが今後どこまで生活インフラへ浸透するか、また他国企業がどのように対抗策を講じるか、引き続き注目したい。
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