AI投資で大学卒就職率が高卒並みに低下、スキル重視傾向 米連銀調査

2025年11月24日、米クリーブランド連銀は若年の大学卒就職率が高卒と同水準まで落ち込んでいるとの調査結果を公表した。AI投資の加速でホワイトカラー職の採用が鈍化した。
AI拡大で若年大卒の就職率が急低下 高卒と同水準に並ぶ
クリーブランド連銀のアレクサンダー・クライン氏とバリシュ・カイマク氏は24日のブログ投稿で、若年層の大学卒就職率が高卒と並ぶ水準まで低下したと明らかにした。長年続いた「大学卒の方が就職しやすい」という優位性が弱まりつつあり、米労働市場の構造変化を象徴する結果と言える。
この分析は20日に発表された米雇用統計を踏まえたもので、9月の大学卒業者の失業率は上昇基調にあった。背景には企業によるAI投資の急速な拡大がある。とりわけ労働市場への入り口に立つ若年層はその影響を強く受けている。
実際、20〜24歳の失業率は9月に9.2%となり、前年同月比で2.2ポイント上昇した。新規労働者の多くが競争の激化に直面し、初職獲得が難しくなる状況が広がっている。また、大学卒は平均賃金や雇用安定性で依然優位にあるものの、その差は縮まりつつあり、高等教育の経済的メリットが揺らぐ可能性が示唆されている。
学位価値は揺らぎの段階へ AI時代の雇用はスキルを基点に再編も
今回の調査結果は、大学学位の価値が従来とは異なる基準で評価され始めている可能性を示唆している。AI関連投資が各産業で進むなか、多くの企業は事務処理の自動化を検討しつつ、実務スキルを備えた人材の活用を優先する場面が増えている。従来の「学歴を前提にした採用」から、「即戦力としてのデジタル技能や専門性」をより重視する方向へ比重が移りつつあるとみられる。
メリットとしては、大学教育における実践性の向上が期待される点が大きい。大学側がカリキュラムを見直し、AI運用、データ分析、プロジェクト経験といった成長領域に直結する学びを取り入れれば、学生が産業のニーズに合った能力を習得しやすくなる。結果として、企業が求める高度人材の育成が促進され、AI関連分野の競争力向上につながる可能性がある。
一方で、課題も浮き彫りになる。若年層が初職獲得の段階でつまずいた場合、キャリア形成の遅れが後々まで影響する「ロックイン効果」への懸念は根強い。特にスキル重視が進む環境では、一度採用機会を逃すと経験や技能を蓄積しにくくなり、格差の固定化につながるリスクが指摘される。また、学位と収益性の関係が揺らぐことで、大学進学の費用対効果に疑問を抱く層が増え、進学率の低下を招く可能性も否定できない。
今後は、学位だけでは測れない多様なスキル証明が重視される方向性が強まると見込まれる。デジタルバッジ、専門講座の修了証、インターン経験など、実務能力を可視化する手段が評価軸として浸透すれば、学歴中心の二分法とは異なるキャリア形成モデルが普及する可能性がある。AI時代の雇用環境は、学位とスキルの関係性が再編される過渡期を迎えていると言えそうだ。
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