富士フイルム、静岡工場に半導体材料新棟を完成 開発と品質評価を強化

2025年11月25日、富士フイルムは静岡工場に先端半導体材料の開発・評価用新棟を竣工し、同月から稼働を開始したと発表した。AI半導体など先端市場の需要増に対応する体制を整え、事業拡大を狙う国内拠点の取り組みである。
静岡工場新棟で先端半導体材料の開発と評価を加速
富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(FFEM)は、静岡工場に地上4階建て・延床約6,400㎡の新棟を完成させた。建屋と設備を合わせた総投資額は約130億円に達する。
新棟には高清浄度のクリーンルームと先端評価機器を設置し、開発品や製品の品質評価体制を拡充する。
特に、半導体材料に含まれる微粒子の検査工程にAI画像認識を導入することで分析精度を向上させる取り組みを行う。
BCP対策としては、RC造柱頭免震構造を採用し、クリーンルームを地上12mに配置することで水害リスクに備える。
また、DX推進部門を新棟に配置することで製造工程へのAI活用を拡大し、製品品質向上と安定供給を同時に実現する。これにより、EUVリソグラフィ用レジストやArF、NIL、PFASフリー材料、Wave Control Mosaic™など先端材料の開発スピードが高まる見込みだ。
静岡工場は国内だけでなくグローバル拠点と連携し、顧客の最先端プロセス技術開発を支援する役割を担う。新棟の稼働により、次世代半導体パッケージ用コア材料やAI半導体向け需要への対応力もさらに強化される。
新棟稼働で加速する事業成長と潜在リスク
新棟の稼働は、半導体材料事業の研究開発速度向上と製品安定供給の両立に直結するため、富士フイルムグループ全体の売上拡大につながると考えられる。特に、AIデータセンター向け半導体需要の急増に柔軟に対応できる体制を構築する点で優位性が生じる。
一方で、高度なクリーンルーム設備やAI解析装置の導入に伴う維持管理コストや技術者確保の課題も無視できない。設備投資は今後も継続的に必要であり、初期投資回収の期間や市場需要の変動リスクが経営判断に影響する可能性がある。
さらに、半導体市場は国際的競争が激しいため、海外拠点との連携やサプライチェーンの安定性が継続的な課題となりうる。新棟単体での効果は大きいが、グローバル戦略との整合性を保つ運用が求められるだろう。
総じて、静岡工場新棟は開発加速と品質安定化というメリットを享受しつつ、運用コストや市場変動リスクを管理する能力が事業成長の鍵になると考えられる。
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