日立、AI制御ロボ公開 製造現場の自動化に本格展開へ

2025年11月20日、日立製作所は東京都内の研究開発拠点で、AIが人の頭部や腕を模したロボットを自律制御する技術を公開した。今後は製造業の顧客向けに展開し、人手不足解消や生産性向上を狙う。
AI制御ロボ、配線作業やバルブ操作を自律で実演
日立製作所が公開したロボットは、従来AIでは難しかった柔らかい配線やケーブルの扱いを自律制御で可能にした点が特徴である。試作機は人間の手の動きを模倣し、力加減や動作タイミングをAIが判断して配線作業を実演した。
当日のデモでは、工場設備のバルブ操作も自律で行い、今後は自動車や産業機械などの生産現場における設備運用や保守、部品交換にも対応できる見通しだ。こうした技術は、人手不足が深刻化する製造業において作業負荷軽減と生産性向上の両立に貢献する可能性がある。
※自律制御:ロボットや機械が人の指示なしに状況を認識し、最適な動作を判断して実行する技術。
製造業への導入で効率化とリスク管理の両立が課題
AI制御ロボの導入は、製造現場における生産性向上や人手不足解消への寄与が期待される一方、初期導入コストや現場環境への適応の難しさも無視できない課題である。
特に、柔らかい物体や複雑な作業環境における誤作動は、安全面から慎重な管理が求められる。
現場での事故やトラブルは、企業の信頼や生産計画に直接的な影響を及ぼす可能性があるため、導入段階での検証が不可欠である。
さらに、従業員の業務再編やスキル移行も重要な課題だ。
ロボットによる自動化が進めば、人は監視や管理といった高度な業務にシフトできるが、初期段階では作業フローの調整やトラブル対応に人的リソースが求められる。
また、現場スタッフへの教育や操作訓練も同時に進める必要がある。これらの負担を軽減しつつ自動化を定着させることが、導入成功の鍵となる。
長期的には、技術の安定運用と現場適応が進めば、製造業全体の効率化や競争力強化につながる可能性が高い。
日立は今後、顧客企業と連携して現場実証を重ね、適用範囲を拡大することで、国内製造業の自動化推進を後押しすると考えられる。
この過程で得られる知見は、ロボットの運用マニュアルや安全基準策定に反映され、他の製造現場への水平展開にもつながると見られる。
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